日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
胎児期より先天性バルサルバ洞動脈瘤破裂を合併した左心低形成症候群の一例
古賀 玲奈佐藤 智幸松原 大輔鈴木 峻岡 健介関 満片岡 功一山形 崇倫
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2020 年 36 巻 4 号 p. 328-333

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抄録

バルサルバ洞動脈瘤は先天心奇形に合併することもあるが,小児では極めて稀な疾患であり,また胎児期から破裂をきたした報告はない.今回,胎児期よりバルサルバ洞動脈瘤の破裂を合併した左心低形成症候群の一例を経験した.症例は女児.胎児心エコー検査で心室中隔欠損を伴った非典型的な左心低形成症候群(大動脈弁閉鎖,僧帽弁閉鎖,痕跡的左室)と診断され,中等度の三尖弁逆流の合併が疑われた.しかし,出生後の心エコー検査では三尖弁逆流は認めず,大動脈基部から右房に短絡する血流を認め,バルサルバ洞動脈瘤破裂の合併を疑った.精査として末梢動脈からの逆行性大動脈造影を施行し,大動脈無冠尖のバルサルバ洞の下方突出およびそこから右房に短絡する血流を認め,バルサルバ洞動脈瘤破裂と診断した.バルサルバ洞動脈瘤は胎児期でも破裂をきたすことがあり,右房への短絡血流は三尖弁逆流と見誤ることがある.バルサルバ洞動脈瘤破裂の確定診断にあたり,逆行性大動脈造影は有用な選択肢である.

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© 2020 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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