日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
右室依存性冠循環を伴った右心低形成症候群に対する上行大動脈右室短絡術前後の冠血流評価
橋本 和久浅田 大 石井 陽一郎高橋 邦彦藤﨑 拓也森 雅啓松尾 久実代青木 寿明盤井 成光萱谷 太
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2023 年 39 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

症例は在胎39週5日,2,910 gにて出生した男児で,肺動脈閉鎖,右室低形成,心室中隔欠損症,左冠動脈起始部閉鎖,右室依存性冠循環(RVDCC)と診断された.冠血流の評価に,類洞交通の血流パターンをフォローした.初回手術前は,収縮期に右室から左室心筋へ,拡張期に左室心筋から右室へ向かう2相性血流であった.月齢1に左Blalock–Taussigシャント術を施行後,循環動態が不安定となり心筋虚血が疑われた.類洞交通の血流パターンは,収縮期に右室から左室心筋へ,拡張早期に左室心筋から右室へ,拡張後期に右室から左室心筋へ向かう3相性パターンに変化していた.月齢2に上行大動脈右心室短絡術(Ao-RVシャント)を施行し臨床症状の改善を認めた.術後の類洞交通血流パターンは術前と同じ3相性パターンであったが,拡張早期にAo-RVシャントを通して酸素化された血液が右室に流れ,拡張後期に右室から左室心筋へ灌流することで虚血が改善したと推察される.Ao-RVシャントは,RVDCCを伴う心筋虚血に対し有用な治療であり,類洞交通の血流パターンを評価することは心筋虚血の予測に有用と考えられる.

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© 2023 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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