日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
Print ISSN : 0911-1794
ISSN-L : 0911-1794
Review
先天性心疾患に対する冠動脈移植術に伴う冠動脈閉塞性合併症:手術法の検討と提言
北村 惣一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 39 巻 1 号 p. 3-8

詳細
抄録

冠動脈移植手術(coronary transfer)を要する小児期手術後の冠動脈狭窄や閉塞は稀であるが,重篤な合併症で手術死・遠隔死の重要な原因となる.この早期発見と早急な対処は手術成績,遠隔期成績の改善に通じる.この合併症は新生児期に行う大血管転位症に対する動脈スイッチ手術(arterial switch operation: ASO)において特に重要である.低体重で,かつ冠動脈の異常が少なくないからである.この合併症に対して2つの手術法が存在するが,その適応基準は定められていない.1つは外科的冠動脈口パッチ形成術(surgical ostial angioplasty: SOAP),他は内胸動脈グラフトを用いた小児冠動脈バイパス法である(pediatric coronary artery bypass surgery with an internal thoracic artery graft: PCABS-ITA).両法にはそれぞれ利点と欠点があるが,早期成績には両者の差は明らかでない.現状では病変の重症度と範囲に鑑みながら,急性期の緊急救命手術にはSOAPがI(C),PCABS-ITAがIIa(C),ASO術後遠隔期の冠閉塞には,新大動脈の拡張や弁閉鎖不全,右室流出路狭窄等がなければPCABS-ITAがI(C),SOAPがIIa(C)と考えている.今後,遠隔成績の追跡が重要となる.幸い稀な合併症であるため,databaseによる遠隔成績の解析が必須である.

著者関連情報
© 2023 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top