2023 年 39 巻 2 号 p. 62-68
肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)の疾患原因遺伝子BMPR2が報告されてから,20年余りが経過した.その後,原因遺伝子および原因遺伝子候補は数十個にまで増加しているが,その臨床現場での意義や有用性が,一般の臨床家には,いまひとつわかりにくいのではないかと筆者は感じている.今回は,2023年の現時点で筆者が特に注目しており,かつ臨床的意義も高いと考えている,TBX4,SOX17,GDF2の3遺伝子に焦点を当てて概説する.さらにエピジェネティック解析,PAH患者とその家族における遺伝学的検査についても述べることとする.最後に,遺伝学的背景に基づいた,PAHの新規治療法の開発の可能性についても触れる.