2023 年 39 巻 3 号 p. 116-125
小児循環器の臨床現場において心不全の病態評価を要する場面は多いが,血行動態の重要な部分を占める拡張能を正確に測定評価することは簡単ではない.心室の拡張障害は拡張早期の弛緩能低下と拡張後期のStiffness上昇(コンプライアンス低下)に分類される.心室拡張早期の弛緩能は,収縮した心筋の弾性力・復元力によるElastic recoil, ミオシンとアクチンによる収縮の不活化であるActive relaxation, 心房圧に反映される前負荷Preloadに影響を受ける.拡張後期の心室Stiffness上昇は,タイチンのIsoformsや心筋間質組織のコラーゲン増生が関与するが,一方でこれらは拡張早期のElastic recoil・Restoring forceを形成する因子でもある.本総説では心エコー検査を中心とした拡張能の評価に加えて,Pressure phase plane (PPP),Pressure-Volume loop (P-V loop)を駆使した心室拡張能の病態把握の重要性を解説していく.