小児歯科学雑誌
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原著
当院に通院中の小児患者における下顎小臼歯歯胚石灰化の遅れに関する調査
荒井 千鶴巻口 あゆみ高橋 雅齋藤 亮田中 光郎
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2012 年 50 巻 3 号 p. 188-192

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抄録

歯胚の発育や歯の萌出などに関する標準値に関しては,Nolla, Schour とMasslar, Moorrees などによる報告があり,日常の診療に用いている。しかし近年では,当院における小臼歯歯胚の石灰化開始がこれらの標準値に比べて遅い症例に遭遇することが多いように思われる。小臼歯の先天欠如は先行乳歯の治療方針に大きく影響することから,その診断基準となる標準値が実態を反映しているかは重要な問題である。そこで本研究では,当院所蔵のデンタルエックス線写真を用い,下顎第一小臼歯および第二小臼歯の実際の石灰化程度と,その標準値との間に時期的な差が存在するのかについて検討を行った。調査対象は現在まで当院に継続して通院している日本人小児で,下顎第一および第二乳臼歯の齲蝕診断のために,その小児が2 歳から4 歳の間に撮影したデンタルエックス線写真296 枚(男児:143,女児:153)とした。後継の小臼歯歯胚の石灰化段階の評価にはNolla の分類を用いた。その結果,第一および第二小臼歯共に,歯胚の石灰化開始が標準値よりも遅い傾向にあり,また第一および第二小臼歯間の石灰化程度の時期的な差も標準値より大きかった。先天欠如の発生頻度が最も多いのは下顎第二小臼歯であるが,その先天欠如の診断には十分な経過観察が必要であり慎重に行うべきであると考えられた。また,今後全国規模での石灰化時期の調査が必要であると考えられた。

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© 2012 日本小児歯科学会
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