小児歯科学雑誌
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50 巻 , 3 号
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総説
  • 藤田 優子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    平成23 年度の文部科学省,全国学校保健統計調査によると,小児の喘息やアレルギー疾患は年々増加傾向にあり,その治療薬であるステロイド剤の使用も増えている。しかし,近年の研究結果から,たとえ短期間の使用であっても成長障害や骨粗鬆症を惹起する危険性があることが明らかにされている。現在,成人のステロイド性骨粗鬆症治療の第一選択薬にはビスホスホネート系薬剤が使用されているが,小児期における治療方法は未だ確立されていない。本研究では,ステロイド性骨粗鬆症を惹起した成長期ラットに対するビスホスホネート(リセドロネート)の影響について検討を行った。その結果,リセドロネートはステロイド性骨粗鬆症による骨虚弱状態を改善させる効果を有すること,海綿骨内と皮質骨内でリセドロネートの作用は異なることが明らかとなった。また、本研究を通してビスホスホネート関連顎骨壊死の所見は認められなかった。ビスホスホネート関連顎骨壊死の病態解明には高齢者の口腔内に多く存在する歯周病菌などの細菌感染との関連性を含めた解析が必要であると思われる。
  • 岩本 勉
    2012 年 50 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    小児期の軟骨形成は,その後の骨格形成とともに,こどもの成長・発育において,非常に重要な要素である。多くの骨は,胎生期から思春期において,最初に作られた硝子軟骨による足場を基に,骨組織に置換する内軟骨性骨化という過程を経ることによって作られる。この現象を細胞レベルで観察すると,軟骨形成を司る軟骨細胞や,肥大化し細胞死した軟骨細胞を処理する破骨細胞,そして,骨基質を分泌し骨形成を司る骨芽細胞らが中心的な役割を担っており,相互に巧妙なバランスを保ちながら骨代謝に関わっている。近年の分子生物学的解析手法の発達により,それぞれ個々の細胞の分化制御機構が急速に明らかにされてきている。これまでに軟骨細胞の分化過程において,ギャップ結合分子のパネキシン3 が前肥大軟骨細胞に発現し,細胞内のATP レベルをコントロールするヘミチャネルとして,軟骨細胞の増殖と分化機構において重要な機能を担っていることを明らかにしてきた。本稿では,成長・発育に関わる内軟骨性骨化機構における軟骨の成熟過程とその分化過程おけるギャップ結合分子パネキシン3 の発現と機能に焦点をあて,その役割について考察する。
  • 岡 暁子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    下顎骨は,単一骨でありながら,その発生様式は下顎体部,関節・筋突起,下顎角を含む下顎枝部で異なり,出生後も複雑に制御されている。下顎骨発生への理解は,出生後の下顎骨成長発育に深く関わる小児歯科領域においても非常に重要であると考える。TGF-β シグナルは,その役割の幅広さから様々な研究分野で注目されている。我々は,神経堤細胞で特異的にTGF-β II 型受容体を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスWnt1-cre ; Tgfbr2fl/flTgfbr2 CKO)に現れた下顎骨の形成不全について解析を行った。出生時のTgfbr2 CKO マウスには,メッケル軟骨の彎曲,下顎体部および下顎枝部の形成不全がみられた。組織学的には,2 次軟骨として出現する関節突起と下顎角部での軟骨形成を欠き,骨形成が生じていた。遺伝子発現解析によって,この領域での軟骨細胞分化マーカーSox9 発現低下,骨芽細胞分化マーカーRunx2, Dlx5 発現増強が起こっていることが明らかとなった。興味深いことに,Tgfbr2 CKO マウスで発現増強がみられたDlx5 遺伝子欠損マウスとのダブルノックアウトマウスは,細胞増殖活性が改善し,下顎角部の軟骨形成が回復することがわかった。本稿では,下顎骨発生におけるTGF-β シグナルの細胞増殖・分化調節機構をTgfbr2 CKO マウスの表現型から考察したい。
  • 稲垣 暁子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 182-187
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    齲蝕病原細菌Streptococcus mutans は,口腔内における環境の変化や抗菌物質の侵入といった環境ストレスに対応するための様々なタンパクを保有しており,これらの発現はシグナル伝達システムによってコントロールされている。Recombinase A(RecA)は,シグナル伝達システムに関与するタンパクとして報告されており,特に耐酸性に重要な役割を持つ可能性が示唆されている。本研究では,S. mutans の口腔バイオフィルムの形成におけるRecA の機能を検討した。はじめにRecA を欠失させたS. mutans の変異株を作製し,RecA の生物学的特性について調べた。RecA 欠失変異株は,培地をpH 5.0 に調整し培養したところ増殖速度が親株と比較して,遅延していた。また,RecA 欠失変異株によって形成されたバイオフィルムは,親株のものと比較すると死菌体が多く認められ,形成量自体も低下していた。さらに,スクロース存在下でバイオフィルムを形成させた場合,親株では巨大な凝集塊が形成されたが,RecA 欠失変異株では認められなかった。以上の結果は,S. mutans においてRecA タンパクが低pH のようなストレス存在下で誘導され,細菌の生育に重要な役割を担っていることを示し,バイオフィルム形成における主要なタンパクであるGTF をコードするgtf 遺伝子発現に関与している可能性を示している。
原著
  • 荒井 千鶴, 巻口 あゆみ, 高橋 雅, 齋藤 亮, 田中 光郎
    2012 年 50 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    歯胚の発育や歯の萌出などに関する標準値に関しては,Nolla, Schour とMasslar, Moorrees などによる報告があり,日常の診療に用いている。しかし近年では,当院における小臼歯歯胚の石灰化開始がこれらの標準値に比べて遅い症例に遭遇することが多いように思われる。小臼歯の先天欠如は先行乳歯の治療方針に大きく影響することから,その診断基準となる標準値が実態を反映しているかは重要な問題である。そこで本研究では,当院所蔵のデンタルエックス線写真を用い,下顎第一小臼歯および第二小臼歯の実際の石灰化程度と,その標準値との間に時期的な差が存在するのかについて検討を行った。調査対象は現在まで当院に継続して通院している日本人小児で,下顎第一および第二乳臼歯の齲蝕診断のために,その小児が2 歳から4 歳の間に撮影したデンタルエックス線写真296 枚(男児:143,女児:153)とした。後継の小臼歯歯胚の石灰化段階の評価にはNolla の分類を用いた。その結果,第一および第二小臼歯共に,歯胚の石灰化開始が標準値よりも遅い傾向にあり,また第一および第二小臼歯間の石灰化程度の時期的な差も標準値より大きかった。先天欠如の発生頻度が最も多いのは下顎第二小臼歯であるが,その先天欠如の診断には十分な経過観察が必要であり慎重に行うべきであると考えられた。また,今後全国規模での石灰化時期の調査が必要であると考えられた。
  • 後藤 早智, 茂木 瑞穂, 薮下 綾子, 三輪 全三, 髙木 裕三
    2012 年 50 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    歯科用局所麻酔剤スキャンドネスト(3%メピバカイン塩酸塩製剤)は,血管収縮薬,防腐剤や酸化防止剤等の添加物が無配合,短時間作用型という特徴を持つことから小児歯科治療において有用であると考えられるが,小児に対しての国内での使用成績の報告は少ない。そこで,本研究では,小児歯科治療における本剤の臨床的有用性を検討した。対象は東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来で局所麻酔下にて窩洞形成や抜髄等の歯科治療を行った148 症例で,術者および患児にアンケート調査を行った。局所麻酔剤はスキャンドネスト,シタネスト,シタネスト-オクタプレシン,キシロカイン,オーラ注の5 種類から,術者の判断で選択し,使用した。その調査結果では,麻酔効果および処置中の痛みにおいて,薬剤間による有意差は認められなかった。また,薬剤の種類と術後違和感において有意な差が認められ,スキャンドネストは,他剤と比較して術後違和感が少ない傾向が認められた。以上より,スキャンドネストの麻酔効果は他剤と同等で,持続的観血処置や長時間(30 分以上)の処置を除けば,術後の咬傷などを防ぐ意味でも小児歯科において有用性の高い局所麻酔剤と考えられ,他剤を含めた局所麻酔剤の選択肢が拡大したといえる。
  • 余 永, 有村 栄次郎, 稲田 絵美, 齊藤 一誠, 伊藤 千晶, 武元 嘉彦, 村上 大輔, 下田平 貴子, 福重 雅美, 北上 真由美, ...
    2012 年 50 巻 3 号 p. 202-209
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    歯科臨床において,刷掃指導を行う機会は非常に多いにも関わらず,これまで刷掃動作そのものの指導や評価のための指標は確立されていなかった。そのため我々は過去に,刷掃時の歯ブラシの動きに着目し,刷掃の際に生じる固有運動リズムが動作の指標となり得ることを示した。しかしながら,刷掃動作は口腔に対する上肢の細かい協調運動により成り立つ。よって,固有運動リズムの成因と上肢の細かな動作調節を明確にし,刷掃動作の評価,指導,教育をより客観的かつ,根拠に基づいたものにする必要がある。本研究では被験者の運動情報を時系列の3 次元座標値として取得することが可能な高精度モーションキャプチャシステムを用い,歯科衛生士が歯を刷掃する際の上肢の動きを記録した。得られた数値から,歯ブラシの往復運動を遂行する際に生じる,肩部,肘部と手首部の関節の角度変化を算出して,刷掃動作に伴う上肢の動きを定量的に評価し,以下の結論を得た。1 .歯科衛生士の刷掃動作の特徴として,上顎臼歯部頬側の刷掃時は,両側ともに上肢の全ての関節が同調しながら運動していた。2 .刷掃動作時,各関節は協調しながら細かな運動調節を行っており,上顎右側臼歯部頬側刷掃時は肩部と手首部が,左側では手首部が,その調節を担っている可能性が示唆された。3 .刷掃動作時,両側いずれの場合も,肘部は細かい運動の調節ではなく,安定した運動を営むことで,固有の運動リズムの発生に関与している可能性が示された。
  • 八木 幹彦, 加川 千鶴世, 島村 和宏
    2012 年 50 巻 3 号 p. 210-217
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    これまで,身体抑制下歯科治療中の小児の呼吸および循環動態に関する研究から,抑制下では心拍数の著しい有意な上昇と経皮的動脈血酸素飽和度の有意な低下がみられたと報告されており,こうした臨床的研究の結果から小児や障害者に対する抑制時の注意が述べられてきたが,抑制圧力の変化と呼吸・循環動態の関係については小児患者への倫理的配慮から詳細に検討されてこなかった。そこで本研究では,歯科処置への協力が得られない患者に対して,身体抑制法を選択した場合の呼吸および循環動態に与える影響を知る目的で,日本白色ウサギを用い,抑制中の動脈圧,中心静脈圧,心拍数,呼吸数および血液ガスを測定した。実験動物は16 週齢の雄性日本白色ウサギ13 羽とした。その結果,25 mmHg, 50 mmHg, 100 mmHg の圧力で5 分間抑制後,中心動静脈圧,呼吸数は有意に上昇した。また血液ガス分析の結果,PaO2 は有意に減少し,PaCO2 は有意に上昇し,pH の低下が認められた。これらの結果から,短時間の抑制でも,呼吸や循環動態への悪影響を与えている可能性があり,血液ガス分析の結果,高炭酸ガス血症,および低酸素症が起きる可能性が示唆された。また身体抑制解放後に急激な血圧降下がみられたことから,身体抑制後の患者観察も重要と考えられた。さらに,このウサギの研究モデルは,身体抑制や更なる侵害刺激の効果を研究するために有用であることが示唆された。
  • 岩崎 浩, 水谷 智宏, 中山 聡, 宮沢 裕夫
    2012 年 50 巻 3 号 p. 218-228
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    カンボジア・シェムリアップ州の郊外と市内の3 歳,5 歳および12 歳の合計1174 人を対象に口腔内診察とアンケート調査を実施した。調査票を集計し,齲蝕罹患状況と生活環境との関連について検討を行った。1 .齲蝕罹患状況に郊外と市内の明確な差は認められなかった。2 .齲蝕罹患者率は3 歳95.5%,5 歳99.0%,12 歳97.3%,dft とDMFT は3 歳dft=9.2, 5 歳dft=12.3, 12歳DMFT=5.8 であり,日本に比べ高い値を示した。一方,処置歯率は各年齢ともに低い値を示し,齲蝕処置が実施されていない現状が把握できた。3 .間食は齲蝕に関わる甘味類が多く,子どもや保護者に対しては齲蝕誘発性について歯科保健教育が必要と考えられた。4 .保護者に対する歯科保健教育と子どもに対する適切な刷掃指導を行うことにより齲蝕の低減が期待でき,歯科疾患予防システムの構築につながることが示唆された。
  • 島野 侑子, 丘 久恵, 古河 真理子, 藤岡 万里, 井上 美津子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 229-236
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,妊婦教室を受講した妊婦182 名が,自分自身や生まれてくる子どもの口腔の健康に対し,どのような意識をもっているかについてアンケート調査を行った。対象者の年齢は30 代が半数を占め,出産歴数は0(第1 子)が多くを占めた。現在の体調については「良好」が半数を占め,喫煙経験の有無は「あり」が約3 割で,喫煙経験者の現在の状況は2 名がまだ「喫煙中」であった。現在の歯磨きの状態は「問題なし」が約9 割を占め,歯磨きできないときの行動は「水でうがい」が最も多かった。何かのときに相談できる歯科の有無は「あり」が約7 割であった。生まれてくる子どもの口腔の健康に対して心配なことの有無では「まだわからない」が多くを占めるものの,心配な内容は「歯並び」,「むし歯」,「かみ合わせ」の順で多かった。出産後の母乳育児への意志は「ある」が約9 割を占め,「出来る限り母乳を飲ませたい」と希望するものが多かった。胎児の発育や出産に影響を及ぼすとされる喫煙,飲酒と早産,低体重児出産の関係については「知っている」が多かった。また,齲蝕原性菌の母子伝播に関しても「知っている」と答えた者が多かった。妊婦へ口腔を含めた健康に対する意識を高めることにより,妊婦自身だけでなく,出産後の母子の健康につながることを,妊婦に明確に示したうえで,指導,アドバイスを行っていく必要があることが示唆された。
  • 新里 法子, 番匠谷 綾子, 大谷 聡子, 五藤 紀子, 岩本 優子, 山﨑 健次, 香西 克之
    2012 年 50 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    児童虐待の相談件数は近年急激な増加傾向を示しており,社会全体で早急に解決すべき重要な課題となっている。我々は,広島県内の2 か所の児童相談所および子ども家庭センターの一時保護施設に入所した要保護児童を対象に,齲蝕経験者率,未処置歯所有者率,一人平均齲蝕経験歯数および一人平均未処置歯数について調査し,一般の児童と比較検討を行った。その結果,要保護児童は齲蝕経験者率および未処置歯所有者率が高く,一人平均齲蝕経験歯数および一人平均未処置歯数が多いことが示された。また,虐待により保護された要保護児童と,その他保護者の長期療養などの理由で入所した要保護児童の齲蝕罹患状況に,大きな差は認められなかった。要保護児童全体の齲蝕罹患率が高いことから,要保護児童の生活環境自体が齲蝕を誘発しやすいことが推測された。歯科医療従事者は小児の多発齲蝕や長期にわたる齲蝕の放置などを通じて,保護者の養育放棄とそれに伴う養育環境の悪化に気付くことで,虐待を早期に発見できる可能性があることが示唆された。
臨床
  • 田中 丈也, 大東 史奈, 宮本 愛子, 桒原 康生
    2012 年 50 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    日常の臨床において,乳切歯・乳犬歯の形態や歯数の異常は,直視が可能で確認しやすい部位であることから,保護者の関心も比較的高いと思われる。そこで,小児歯科を標榜するハート小児歯科に来院し,歯科的口腔管理中の小児(2000 年~2002 年に生まれた3 歳から6 歳未満・Hellman の歯齢ⅡA 期),2,017 人(男児1,014 人・女児1,003 人)を対象として,視診及びエックス線写真から,乳歯癒合歯または乳歯先天性欠如と後継永久歯の異常を診査し,検討を行った。乳歯癒合歯の発現頻度は68 名(3.37%),乳歯先天性欠如は28 名(1.39%)であった。部位別では,AB 癒合が44 歯で最も多く,次にBC 癒合の31 歯,AB 癒合は6 歯と少なく,BC 癒合は認められなかった。乳歯癒合歯における後継永久歯異常の発現は,28 人(41.2%),乳歯先天性欠如では21 人(75.0%)であった。AB 癒合における後継永久歯異常の発現は7 歯(15.9%)に対し,BC 癒合では22 歯(71.0%)にみられ,有意に高かった。
  • 藤田 果奈, 中野 崇, 徳倉 健, 清水 幹雄, 久保 勝俊, 内藤 宗孝, 前田 初彦, 福田 理
    2012 年 50 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮線維腫は,稀な歯原性腫瘍であり乳歯列期で発生した報告は少ない。今回,3 歳男児の下顎に発生したエナメル上皮線維腫を経験したので報告する。患児は3 歳児健診で乳臼歯の萌出遅延を指摘され,近医歯科にてパノラマエックス線撮影を行ったところ,下顎右側第二乳臼歯の埋伏とその歯冠周囲に透過像を認めたため,精査目的にて紹介により愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した。CT 撮影により歯原性腫瘍が疑われたため,全身麻酔下にて腫瘍摘出術を施行し,病理組織学検査によりエナメル上皮線維腫と診断された。本症例では乳臼歯の埋伏という一般的には保護者の主訴となりにくい症状が健診をきっかけに発見することができ,その重要性が認識された。術後1 年経過した現在,腫瘍再発は認めない。今後,定期的にエックス線撮影を行い再発の有無,第二乳臼歯の萌出状態,後継永久歯の歯胚形成,顎骨の成長を含めた長期にわたる厳重な経過観察が必要であると考える。
  • 山口 登, 大隈 由紀子, 山座 治義, 増田 啓次, 西垣 奏一郎, 柳田 憲一, 野中 和明
    2012 年 50 巻 3 号 p. 256-263
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2015/03/17
    ジャーナル フリー
    本稿では,九州大学病院小児歯科受診中のウイリアムズ症候群2 例の歯科的特徴および臨床的対応について報告する。両症例の患児は,ともに肺動脈狭窄,精神発達遅滞を認めた。歯科的所見では,エナメル質形成不全,前歯部反対咬合および歯の先天欠如が見られた。症例2 では,セファロ分析の結果,下顎骨が前上方へ誘導され反対咬合となっていた。また,効果的な口腔清掃の習得が困難であり,これは同疾患の特徴である空間認識・微細運動の機能障害によるものと考えられる。今後,症例2 の所見を参考としながら,症例1 での臨床的対応を検討していく必要性が示唆された。すなわち,症例1 では齲蝕および歯周疾患の予防に努め,顎顔面部の成長分析により咬合誘導をはかる必要がある。
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