小児歯科学雑誌
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臨床
Angelman症候群の患児に多数歯齲蝕を認めた1例
山座 治義増田 啓次柳田 憲一西垣 奏一郎小笠原 貴子廣藤 雄太野中 和明
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2014 年 52 巻 4 号 p. 559-564

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抄録
Angelman 症候群は,第15 番染色体長腕q11.2−q13 領域に存在するUBE3A を責任遺伝子とする遺伝性疾患である。本疾患は,生後6~12 か月ごろより精神遅滞,運動失調など多様な中枢神経症状を示すようになる。我々は,多数の乳歯齲蝕を伴うAngelman 症候群の1 例を経験したので報告する。患児は,当科初診時年齢1 歳6 か月の男児で,精神遅滞,特異的顔貌として尖ったおとがい,脳波検査における高振幅の不規則徐波の出現,第15 番染色体長腕q11−q13 領域のヘテロ欠失などの所見から当院小児科にてAngelman 症候群と診断され加療を受けていた。口腔内所見として,視診・触診にて多数歯に及ぶ齲蝕が疑われた。しかし,重度の精神遅滞に加えて低年齢であったことから,覚醒下では十分な検査と治療ができないと判断し,保護者の同意を得て全身麻酔下での齲蝕治療を施行した。麻酔中の呼吸・循環動態は安定に経過し,治療後の合併症もなく処置翌日に当院小児科を退院した。Angelman 症候群の歯科口腔領域の特徴として,下顎前突や舌の肥大化,歯間分離,永久歯のエナメル質減形成が報告されている。当院小児科とも連携しながら,定期的な口腔衛生指導を行っていく方針である。
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© 2014 日本小児歯科学会
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