小児歯科学雑誌
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原著
災害時要援護者である小児および障碍児・者を持つ保護者の防災意識に関する調査
山本 愛美中川 弘郡 由紀子北村 尚正杉本 明日菜岩本 勉
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2015 年 53 巻 3 号 p. 373-382

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抄録

本研究では,災害時に専門的かつ手厚い支援が必要な災害時要援護者である子どもや障碍児・者を持つ家庭を対象とし,居住環境や防災意識などの現状把握と問題点の抽出,歯科医療での必要な援助についての探索を目的とし調査を行った。

被験者数は60 人で,定型発達児および障碍児・者の保護者各30 人であった。災害発生に不安を感じている者の割合は,障碍の有無で違いは認められず,不安な時間帯も,就寝時である夜や,家族の活動場所が異なる日中に不安を感じている者が両群共に多かった。また,障碍児・者群は定型発達児群と比べ,自宅から避難所までの距離が遠い傾向にあることが明らかとなった。実際に防災訓練に参加したことがある者は,定型発達児群と比較し,障碍児・者群で有意に多かった。また,集団避難所生活において感染拡大が懸念されるウィルス感冒,インフルエンザ,感染性胃腸炎などの嘔吐下痢症等の予防法について知っている者は,障碍児・者群と比較し定型発達児群で有意に少なかった。大災害への不安は両群ともに大きかったが,防災に関する取り組みや知識,意識に関しては障碍児・者群の方が高かった。

災害が発生した際には,彼らの声が確実に届くようなシステムを構築する必要があり,そのためには歯科を含む各分野の専門家がチームを組み,それらをとりまとめる災害医療コーディネーターのもとで災害の急性期,慢性期等それぞれの時期に応じた体制作りが重要であると考える。

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© 2015 日本小児歯科学会
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