小児歯科学雑誌
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53 巻 , 3 号
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総説
  • 仲 周平
    2015 年 53 巻 3 号 p. 367-372
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    近年,アルコール非摂取者において生じる過剰栄養摂取に起因する肝障害が注目を集めている。これらは非アルコール性脂肪肝と総称され,肝臓の炎症性変化や線維化の進行した病態は非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と称されている。実際にNASH 患者から採取した唾液を分析すると,主要な歯周病原性細菌のうちPorphyromonas gingivalis が高頻度で検出されることが明らかになった。

    そこで,高脂肪食を摂取させるNASH モデルマウスを用いて,P. gingivalis のうち歯周病原性の強いOMZ314

    株を頸静脈より投与した。すると,通常48 週間程度経過して認められる脂肪肝炎の症状が,8 週程度の短期間で生じることが示された。さらに,齲蝕の主要な病原性細菌であるStreptococcus mutans のうち血液分離されたTW871 株を頸静脈に投与したところ,8 週後にはNASH 特有の所見を呈した。その後の様々な解析から,TW871 株を投与することで,酸化ストレスに関連するサイトカインであるメタロチオネインの過剰産生を引き起こすことが分かった。また,炎症性サイトカインであるインターフェロン・ガンマや各種ケモカインの発現上昇を引き起こすことも確認され,口腔細菌によるNASH 悪化メカニズムの一端が明らかになった。

原著
  • 山本 愛美, 中川 弘, 郡 由紀子, 北村 尚正, 杉本 明日菜, 岩本 勉
    2015 年 53 巻 3 号 p. 373-382
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,災害時に専門的かつ手厚い支援が必要な災害時要援護者である子どもや障碍児・者を持つ家庭を対象とし,居住環境や防災意識などの現状把握と問題点の抽出,歯科医療での必要な援助についての探索を目的とし調査を行った。

    被験者数は60 人で,定型発達児および障碍児・者の保護者各30 人であった。災害発生に不安を感じている者の割合は,障碍の有無で違いは認められず,不安な時間帯も,就寝時である夜や,家族の活動場所が異なる日中に不安を感じている者が両群共に多かった。また,障碍児・者群は定型発達児群と比べ,自宅から避難所までの距離が遠い傾向にあることが明らかとなった。実際に防災訓練に参加したことがある者は,定型発達児群と比較し,障碍児・者群で有意に多かった。また,集団避難所生活において感染拡大が懸念されるウィルス感冒,インフルエンザ,感染性胃腸炎などの嘔吐下痢症等の予防法について知っている者は,障碍児・者群と比較し定型発達児群で有意に少なかった。大災害への不安は両群ともに大きかったが,防災に関する取り組みや知識,意識に関しては障碍児・者群の方が高かった。

    災害が発生した際には,彼らの声が確実に届くようなシステムを構築する必要があり,そのためには歯科を含む各分野の専門家がチームを組み,それらをとりまとめる災害医療コーディネーターのもとで災害の急性期,慢性期等それぞれの時期に応じた体制作りが重要であると考える。

  • 余 永, 兒玉 瑞希, 稲田 絵美, 齊藤 一誠, 冨山 大輔, 武元 嘉彦, 村上 大輔, 森園 健, 下田平 貴子, 福重 雅美, 北上 ...
    2015 年 53 巻 3 号 p. 383-389
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    ペングリップによる歯ブラシ把持法は,指先などの操作で歯ブラシの細やかな動きを制御することができるため,一般的に推奨されている把持法の一つである。しかしながら,低年齢児は上肢運動の安定性や協調性が低く,また習熟練度が低いために,ペングリップでの歯の刷掃は困難であることが推測される。

    我々は,習熟練度が低い非利き手で歯を刷掃した際の刷掃動作を計測することで,低年齢児の運動不安定性を想定し,動作解析を試みた。

    つまり,利き手と非利き手のそれぞれを作業手として上顎左右側頬側と口蓋側各部位を刷掃した際に,歯ブラシや上肢の各関節の動きがどのように異なるかを調べることで,以下の結論を得た。

    1 .作業手の同側頬側磨き以外の刷掃において,利き手磨きと非利き手磨きの上肢運動には,ピーク周波数と効果量に違いがあることが分かった。

    2 .特に作業手の反対側磨きは,利き手とその対になる非利き手の上肢運動のピーク周波数と効果量の違いが大きかった。

    3 .ペングリップでの細かい歯ブラシの往復運動を営むためには,上肢各関節の協調運動が必要であることが分かった。

    以上より,ペングリップによる刷掃動作は精度の高い運動であり,高い遂行練度を必要とし,上肢の協調運動が歯ブラシの往復運動に反映されることが分かった。

  • 星野 恵, 大島 昇平, 種市 梨紗, 北村 かおる, 下地 伸司, 川浪 雅光, 八若 保孝
    2015 年 53 巻 3 号 p. 390-398
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    心拍変動解析は,簡便な操作で侵襲もなく,自律神経機能の評価が可能である。不協力な小児や障害者に対して歯科診療を行う場合,精神的,身体的ストレス負荷により,呼吸や循環動態に影響を及ぼす可能性がある。循環動態は自律神経系を介して調節されているため,自律神経機能をモニターすることは安全な歯科診療のために有意義と考えられる。また,自律神経機能の評価はストレス評価の方法としても確立されている。しかし,診療中に体動が起こりうる患者では心拍変動解析に必要な心電図波形の乱れにより解析が不可能となる可能性がある。そこで,本研究は,体動下および体動コントロール下において自律神経機能の評価を行う場合の適切な電極装着方法をボランティアで検討し,検討した方法で不協力児,障害児の診療中の自律神経機能評価を行い,適切な方法であるか確認することを目的とした。

    成人ボランティアで6 種類の電極装着方法を検討した。体幹にシール型電極を装着すると自律神経機能の評価可能な割合は84.0%以上であった。またレストレーナー抑制下では体幹にシール型電極を装着すると成人ボランティアでは66.5%以上,小児ボランティアでは92.3%が評価可能であった。実際の患者に対する診療中も同様の方法で90.1%,97.7%と高い割合で評価可能であった。

    以上より,心拍変動解析を用いた自律神経機能評価を行う場合にはシール型電極を体幹に貼付することで継続的な評価が行えることが認められた。

  • 山下 聡美, 井上 祥子, 田中 裕子, 犬飼 裕子, 坂部 留可, 坂部 潤
    2015 年 53 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,臨床的に簡易に行える口唇形態の定量的評価方法の確立を目的とし,新たに考案した口唇形態計測器(以下;KD 定規)による計測方法(以下;KD 計測)の有効性を検討するために,測定者間での再現性や従来の側貌写真による計測値との誤差を検証した。さらに乳歯列期の小児において,KD 計測で得られた測定結果と口唇閉鎖力との関連性について検討を行った。

    その結果,KD 計測において10 名の測定者間における計測値の有意差は認められず,さらに安静時側貌写真による口唇形態の計測値との有意差も認められなかった。以上よりKD 計測は,高い再現性と計測精度を有することが示された。さらに,研究協力の同意の得られた乳歯列期の2 歳9 か月~6 歳1 か月の小児15 名(男児6 名,女児9 名)を資料とし,KD 計測における臨床的E-line からSabnasale 及びmentolabial Sulcus における計測値と口唇閉鎖力との間に相関が認められ,KD 計測における計測値と口唇閉鎖力との間に関連性を認めることが出来た。

    以上より,今回著者らが考案したKD 計測は,臨床上での有効性が示唆された。

  • 中村 浩志, 溝畑 亜紀子, 犬塚 勝昭, 中村 美どり, 伊藤 三智子, 矢ヶ﨑 雅, 大須賀 直人
    2015 年 53 巻 3 号 p. 406-413
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    我々は,2007年4月から2010年3月までの3年間に本院小児歯科へ口腔外傷を主訴として受診した0歳から15歳の233人(男154人,女79人)を対象として調査を行い,17 年前に行った同様の調査報告と比較検討を行った。

    1 .受傷時年齢は幼児期後期が最も高いが,17 年前の45.5%から38.2%と減少傾向を示した。学童期後期についても17 年前の15.6%から10.7%へと減少傾向を示した。一方,幼児期前期は17 年前の13.8%から25.3%と増加傾向が認められた。

    2 .受傷原因は,17 年前は打撲による受傷が35.9%と最も多く,次いで転倒25.7%,親の目が届かない原因不明の受傷が24.6%の順で多かったが,今回は転倒による受傷が55.4%と最も多く,次いで衝突18.9%の順であった。

    3 .受傷の既往歴があった小児はほぼ変わらなかったが,受傷の既往が不明である割合は17 年前の22.8%から0.4%へと減少傾向を示した。

    4 .受傷部位については17 年前とほぼ同様で,上顎前歯部の受傷が約7 割を占めた。

    5 .受傷様式では,17 年前と比べ軟組織の裂傷を合併するものが多い傾向を示した。

    6 .来院までに何らかの処置を受けた者は,17 年前も現在も約15%とほぼ同じ割合であった。初診時の処置は経過観察が多いが,今回は整復固定といった機能維持や修復による審美回復の処置が増加傾向を示した。

  • 浦野 絢子, 岩田 美奈子, 小鹿 裕子, 荒井 亮, 櫻井 敦朗, 辻野 啓一郎, 大多和 由美, 新谷 誠康
    2015 年 53 巻 3 号 p. 414-420
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    地域医療との連携を推進する大学病院は,地域社会が求める医療を迅速かつ正確に提供する義務があり,そのためには患者の来院動機や状況について常に把握しておく必要がある。そこで,平成22 年1 月から平成24 年12 月までの3 年間に本院小児歯科外来に初めて来院した小児1,816 名のうち,歯の外傷を主訴に来院した192 名(乳歯238 歯,永久歯107 歯)について,年齢,性別,来院までの日数,紹介の有無,受傷原因,受傷状態,受傷歯種,初診時の対応について調査を行い,以下の結果を得た。

    1 .受傷時年齢は2 歳が最も多く,2 歳以下の低年齢児で全体の44%を占めていた。

    2 .性別は乳歯,永久歯ともに男児に多かった。

    3 .来院までの日数は,乳歯,永久歯ともに当日の来院は少なく,2~7 日後が多かった。

    4 .乳歯では74%が,永久歯では54%が他院からの紹介により来院していた。

    5 .受傷原因は,乳歯,永久歯ともに約半数が転倒であった。

    6 .受傷状態は,乳歯では脱臼が58%と最も多く,永久歯では歯冠破折が41%と最も多かった。

    7 .受傷歯は,乳歯では上顎乳中切歯が69%で最も多く,永久歯では上顎中切歯が60%で最も多かった。

    8 .初診時の対応は,乳歯,永久歯ともに経過観察が最も多かった。

    以上の結果から,小児の歯の外傷を統計的にみると,過去の調査結果と大きな変化がないことがわかった。しかしながら,位置異常を伴わない不完全脱臼の割合が高いこと,初診時の対応として経過観察が最も多いことは,近年は軽度の外傷であっても受診する患児が増えている事を示唆している。また,一次医療機関からの紹介は確実に増加しており,地域社会からの都心歯科大学病院小児歯科の専門的な知識や技術がよりいっそう求められていると考えられる。

臨床
  • 増田 啓次, 山座 治義, 松石 裕美子, 磯村 麻衣子, 柳田 憲一, 西垣 奏一郎, 小笠原 貴子, 廣藤 雄太, 野中 和明
    2015 年 53 巻 3 号 p. 421-426
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    今回,我々は全身麻酔下に上顎正中部埋伏過剰歯,交換期│└B─の抜去および上唇小帯切除術を施行した後,麻酔の覚醒処置中に,前歯部にずれたバイトブロックの噛みしめにより└│1─が脱臼し唇側転位した1 例を経験した。埋伏過剰歯は1─│┘口蓋側の骨削合のみにより抜去し得た。─1┴│─1は正中離開し,両歯とも歯根は1/2 程度完成していた。1─│┘の遠心には歯根吸収のない─C│┘が近接していた。└│1─については└│B─を抜去した結果,遠心に近接する歯がなくなり正中離開と合わせて孤立歯となった。下顎に孤立歯はなかった。

    以上より,前歯部にずれたバイトブロックの噛みしめにより生じた力が,歯根の短い│└1─に集中したため側方転位したと考えられた。

    混合歯列期はUgly duckling stage であることも多く,1─┴│─1は単根歯で歯根形成途中のため不安定であるだけでなく,正中離開,隣接する─B│┴B─の脱落・抜去などが加わり孤立歯となる場合がある。したがって,混合歯列期小児の全身麻酔中の歯の損傷リスクは歯の動揺度だけでなく,隣在歯の萌出状況および手術内容も含めて多角的視点から評価する必要がある。損傷リスクの高い交換期乳歯は術前もしくは術中抜去,幼若永久歯は覚醒・抜管時のマウスガードによる保護に努めるべきである。また,この時期特有の歯の損傷リスクについて術前に麻酔医と確認するとともに,保護者への説明も不可欠である。

  • 増田 啓次, 山座 治義, 磯村 麻衣子, 柳田 憲一, 小笠原 貴子, 西垣 奏一郎, 廣藤 雄太, 野中 和明
    2015 年 53 巻 3 号 p. 427-434
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    SAPHO 症候群は,骨・関節・皮膚に無菌性の炎症性病変を生じる疾患で,早期に診断すれば抗炎症薬を中心とした薬物治療により予後良好である。口腔顎顔面領域における骨病変の好発部位は下顎骨である。しかし,胸骨,脊椎,四肢長管骨などに比べて頻度は低く診断に苦慮することがある。薬物治療が遅れて慢性化すると,下顎骨の肥大や変形をきたし侵襲の大きい外科治療が行われる場合もある。

    今回,我々は非感染性下顎骨骨髄炎と掌蹠膿疱症を伴うSAPHO 症候群の1 例を経験した。症例は,歯科治療の2 か月後に出現した右頬部腫脹と疼痛を主訴とする7 歳の女児で,抗菌薬は無効であった。手指および足底には,右頬部の症状と同時期に出現した皮膚病変があり掌蹠膿疱症を疑われていた。顔面CT 検査では右下顎角から下顎枝に骨融解像および骨膜反応を,また右咬筋,内側翼突筋およびリンパ節の腫大を認めた。歯科治療歴から,歯性感染に起因する右下顎骨骨髄炎を疑われ当科を紹介された。口腔内を精査したが感染源は不明であった。当院小児科に精査を依頼し,CT, PET, MRI による全身精査とともに骨および皮膚病変の生検を行った。検査結果と臨床経過から,非感染性下顎骨骨髄炎と掌蹠膿疱症を伴うSAPHO 症候群と診断した。非ステロイド性抗炎症薬により症状は速やかに改善した。感染源不明の下顎骨骨髄炎を疑う場合は本症候群を考慮すべきである。

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