小児歯科学雑誌
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原著
マウスピース型咬合誘導装置における反対咬合の被蓋改善のメカニズム
有限要素法による検討
横井 由紀子岡藤 範正山川 祐喜子山川 洋子岡田 芳幸大須賀 直人
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2019 年 57 巻 4 号 p. 437-443

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抄録

本研究の目的は,マウスピース型咬合誘導装置による反対咬合の被蓋改善のメカニズムを検証することである。そのため,歯の移動を有限要素法によってシミュレーションした。

片側の上下歯列について,歯の有限要素法モデルを作成した。歯は剛体と仮定した。歯根膜は,線形弾性体と仮定した。顎骨は剛体と仮定した。誘導装置の有限要素法モデルは,歯科用CT で撮影した断面画像から作成した。歯列に誘導装置を装着し,上顎を固定した状態で下顎を前方へ移動させた。歯の移動は,次のようにしてシミュレーションした。歯に力が作用すると,歯根膜の弾性変形によって歯が動揺する。この動揺と同じ方向に歯が移動すると仮定して,歯槽窩を移動させた。この計算を繰り返して歯の移動をシミュレーションした。1 回の繰り返し計算ごとに下顎を0.1 mm 移動させた。

シミュレーションの結果,反対咬合が被蓋改善されるメカニズムが検証された。すなわち,反対咬合の歯列に誘導装置を装着すると,下顎が後方へ移動して構成咬合位になる。これが元の位置に戻ろうとする際,下顎前歯には舌側方向の力が作用し,上顎前歯には唇側方向の力が作用した。これらの力によって,下顎前歯は舌側傾斜し,上顎前歯は唇側傾斜した。上下の切縁が反対方向に移動して,反対咬合が被蓋改善された。前歯はやや圧下された状態となった。他の歯は,ほとんど移動しなかった。

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© 2019 日本小児歯科学会
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