2019 年 57 巻 4 号 p. 451-456
近30 年の間,小児を取り巻く環境はめまぐるしく変化している。このような社会構造の変化の中で,高次医療機関である大学病院小児歯科の役割も変化してきており,多様なニーズへの対応が求められている。今回2015 年から2017 年における初診患者の実態について調査し,1989 年,1999 年の過去の調査と比較・検討を行い,以下の結論を得た。
1 .初診患者の年間平均患者数は1,264 名で,過去2 回の調査(1989 年839 名,1999 年750 名)よりも増加していた。
2 .初診時年齢は1 歳が最も多く,次いで2 歳,3 歳の順であった。過去2 回の調査と比較すると,経年的に受診年齢の低年齢化がみられた。
3 .患者の居住地域は当病院周辺地域からの来院が66.3%を占めていた。
4 .来院動機は齲蝕が最も多く,全体の28.2%を占めていた。過去の調査と比較すると,齲蝕は減少傾向にあるが常に最も多い主訴であった。齲蝕以外の主訴では,外傷に次いで萌出異常やその他が10%を超えており,主訴の多様化が認められた。
5 .紹介患者数は年々増加しており,全体の66.1%を占めていた。
この30 年の間に小児歯科がより専門的な分野として認められ,求められるように変化してきたものと考えられる。また,社会の変化により患者本人だけでなく家庭環境等を加味しライフスタイルをふまえた口腔衛生指導が求められている。今後も小児歯科臨床において,専門性と多岐にわたるニーズに対応する能力が不可欠であると示唆された。