小児歯科学雑誌
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総説
味覚の発達を支える島皮質におけるヒスタミンのシナプス伝達修飾作用の検討
武井 浩樹
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2021 年 59 巻 2 号 p. 45-50

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抄録

ヒスタミンH3受容体は自己受容体であり,ヒスタミン作動性ニューロンの終末からのヒスタミン放出を調節している。島皮質を含む大脳皮質にはH3受容体が広範囲に分布しているが,その役割や機能はあまり知られていない。そこで,本研究では島皮質におけるH3受容体を介したシナプス伝達機能を解明することを目的とした。

大脳皮質を含む急性脳スライス標本を作製し,ホールセルパッチクランプ法を行った。複数のニューロンより同時にホールセル記録を行い,単一性興奮性シナプス後電流(uEPSP)と単一性抑制性シナプス後電流(uIPSC)を記録した。H3受容体の作動薬であるR-α-methylhistamine(RAMH)の投与により,uEPSCとuIPSCの振幅は減少した。H3受容体の拮抗薬であるJNJ 5207852またはチオピラミドを前投与するとRAMHによるuEPSC/uIPSCの振幅減少はみられなかった。チオピラミド単独投与はuIPSCの振幅を増加させた。また,興奮性微小シナプス後電流と抑制性微小シナプス後電流は,RAMH投与により発生頻度が減少した。以上より,H3受容体がシナプス前終末からの神経伝達物質の放出を抑制することが示唆された。

島皮質でのシナプス前細胞におけるH3受容体による神経伝達物質放出の抑制は,味覚や内臓感覚などの感覚情報処理の調整に関与していると考えられる。

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© 2021 日本小児歯科学会
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