近年,小児期の齲蝕は統計学上経年的に減少傾向を示している。一方で,多数歯齲蝕により口腔崩壊している子供が少なからず存在し,ほとんど齲蝕のない子供との二極化が問題となっている。子供を取り巻く環境は家族形態等の多様化により複雑化してきているため,自身での口腔衛生管理が難しい乳歯列期の小児の齲蝕罹患は,環境の影響を大きく受けていると考えられる。そこで今回,生活環境と齲蝕との関連について調査した。
対象は,2009年から2016年の期間中,当科に初診で来院した3歳から5歳の乳歯列期小児475名(平均年齢4歳4か月)とした。初診時の生活習慣調査票より,「間食状況」「家庭環境」「口腔衛生習慣」等の生活環境について調査し,口腔内診査表,デンタルエックス線写真,診療記録を基に齲蝕罹患状況(dmf歯数)を算出し,統計学的に検討した。
その結果,小児の齲蝕罹患は,間食回数,保護者の就労状況,出生順,仕上げ磨きの状況,歯磨きの回数,フッ化物塗布経験と関連性があることが明らかとなった。一方,祖父母との同居の有無,患児の就園状況は齲蝕罹患の要因に該当しない可能性が示された。
以上より,子供の生活習慣や子供を取り巻く生活環境が,齲蝕罹患に影響を及ぼすことを統計学的に示すことができたと考えられる。