2021 年 59 巻 3 号 p. 161-167
歯の外傷を主訴に小児歯科外来を受診する小児は近年増加傾向にある。当院でも外傷を主訴に来院する小児は多い。
今回われわれは外傷受傷後,上顎乳犬歯および下顎乳切歯が下唇へ刺入し,開口不能になった1例を経験したので報告する。
患者は3歳男児。外傷により開口不能に陥り,近隣の内科より精査依頼があった。受傷から1週間開口できず,発語がなく,食事摂取が困難とのことであった。パノラマエックス線撮影では原因が特定できなかったため,頭頸部単純CTを撮影したところ,上顎乳犬歯および下顎乳切歯の下唇への刺入,下顎左側乳中切歯の歯根破折が確認された。静脈内鎮静下にて開口を試みたところ上顎乳犬歯および下顎乳前歯の下唇への刺入が開放され,開口が可能となった。下唇の乳歯刺入部には一部組織に壊死が疑われたため,同部位に対してデブリードマンを行った。その後経過観察を行い,下唇の創傷治癒,開口および食事摂取が可能となったことを確認した。
本症例において開口不能となった要因には多因子が考えられ,コミュニケーション能力が確立されていない低年齢児への対応の困難性が再認識された。