高次医療機関である北海道大学病院の小児・障害者歯科外来の実態とその時代に伴う変化について把握することを目的に当外来における2016年から5年間の新規来院患者の実態を調査し,以下の結論を得た。
1.1年間の平均新規来院患者数は338名であり,年によって若干の差が認められた。男性が57.1%,女性が42.9%を占め,性差が認められた。
2.初診時の年齢は4~7歳にピークを認めた。
3.主訴はむし歯・歯痛が46.8%と最も多かった。
4.新規来院患者の居住地域は札幌市内が74.1%を占めたが,隣接市町村や100km以上離れた地域からの患者も認められた。
5.既往疾患を有する患者の割合は41.1%であった。疾患の内容としては精神・行動の障害を有する患者が最も多かった。
6.行動変容法を含む通法通りの診療を行った患者は71.8%であり,それ以外は体動抑制や全身麻酔下での診療が必要であった。全身麻酔下での年間平均症例数は既報と比較して増加傾向であった。
7.紹介患者は80.3%であり,既報と比較して割合が増加していた。歯科医院からの紹介が大多数であったが,医科や他の医療施設からの紹介も認められた。
以上のことから,高次医療機関の小児・障害者歯科として,さまざまな症例に対応するための専門的な知識・技術を有すること,また,医科歯科連携の重要性の高まりなど,時代とともに変化していく医療体制や小児・障害者歯科のニーズに応じることの必要性が示唆された。