小児歯科学雑誌
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症例報告
過剰歯により萌出障害を伴った下顎第二乳臼歯が自然萌出した1例
棚瀬 精三棚瀬 康介
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2024 年 62 巻 3 号 p. 111-117

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抄録

著者らは3歳11か月の女児で下顎左側第二乳臼歯が未萌出の症例を経験した。エックス線画像から下顎左側第二乳臼歯は近心隅角部のみ骨内萌出を認め,咬合面上には石灰化硬組織を認めた。下顎左側第二乳臼歯の歯根は未完成であった。4歳7か月時,下顎左側第二乳臼歯の近心咬合面の萌出を認めた。その後,5歳3か月時,石灰化硬組織は遠心位に移動し,下顎左側第二乳臼歯の咬合面全体の萌出がみられた。石灰化硬組織に歯根形成を認めたため,歯牙様硬組織とした。5歳9か月時,CT画像撮影を行った。歯牙様硬組織は舌側に位置し,歯冠遠心隣接面は第一大臼歯の歯冠近心舌側面と,根尖は第二乳臼歯歯根との近接が認められた。歯根には彎曲が認められた。歯牙様硬組織による第一大臼歯の萌出障害が懸念されたため摘出を試みた。しかし,歯冠部は鉗子で把持できるものの,スムーズな摘出は困難で,第一大臼歯歯胚および第二乳臼歯の歯根の損傷を起こすことが懸念されたため,摘出は断念した。その後,経年的にレントゲン写真撮影を行ったが,下顎左側第二小臼歯の歯胚形成は認められなかった。12歳10か月時に下顎左側第二乳臼歯遠心側の舌側歯槽部から歯牙様硬組織の萌出を認めたため,浸潤麻酔下で摘出を行った。歯牙様硬組織の色調と形態から,臨床的に過剰歯と診断した。過剰歯の摘出から約1年経過時,下顎左側第二乳臼歯の歯根は若干の吸収を認めるが,咬合機能を果たしている。

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© 2024 日本小児歯科学会
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