2025 年 63 巻 1 号 p. 1-4
ピエゾ1機械受容チャネル(PIEZO1)は,細胞外からの機械的刺激による細胞膜の張力変化を感知する機械受容カルシウムチャネルである。歯髄および骨髄中に存在する間葉系幹細胞は,それぞれ象牙芽細胞や骨芽細胞への分化を通して硬組織の形成に重要な役割を果たしているが,機械的刺激によるそれらの分化誘導メカニズムにはいまだ不明な点が多くある。本研究では,象牙質や骨の硬組織形成を促進する新規技術の開発を目指し,骨髄由来間葉系幹細胞におけるPIEZO1による硬組織形成促進メカニズムを解析した。その結果,PIEZO1は骨髄由来間葉系幹細胞(UE7T-13細胞)において,他の機械受容チャネルと比較して高い発現を認め,細胞膜表面や細胞突起に局在していることが明らかとなった。さらに,PIEZO1活性化因子であるYoda1がUE7T-13細胞において,ERK1/2経路のリン酸化を介して骨形成に重要なBMP2遺伝子の発現を促進し,アリザリンレッドで染色される石灰化結節の形成を促進することが示された。また,PIEZO1のC末端に存在するR-Ras結合領域が,PIEZO1活性化によるERK1/2経路のリン酸化に関与していることが示唆された。本研究により,PIEZO1を介した骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化メカニズムの一端が解明された。本研究成果は,PIEZO1の分子メカニズムを応用した新たな硬組織形成技術の基盤となることが期待される。