2025 年 63 巻 1 号 p. 5-11
カンボジアでは,過去の内戦の影響から現在でも歯科医療サービスは供給不足である。また歯科保健教育の実施が十分でないため人々の口腔衛生に対する意識が低く,特に小児において齲蝕罹患率が高い。本研究は,ある小学校における教員への歯科保健教育プログラムの実践と,児童の経年的な口腔内状況の調査・分析を目的として実施した。2011~2014年に対象小学校教員への歯科保健教育に関する研修会を実施し,2013年時に質問紙調査を実施した。2011~2015年に児童のべ2,637名の口腔内診査を実施し,齲蝕の状態として齲蝕有病者率・DFT・DF歯率について,口腔衛生状態として歯垢の付着状態・歯肉の状態・歯石沈着の有無について集計・分析した。教員研修会は,対象校の教員約90名が参加し,質問紙調査では児童への歯科保健教育の実践について95.5%の教員から前向きな回答を得た。口腔内診査では,齲蝕有病者率は各調査年とも90%以上を示し,DFT・DF歯率は2011年から2015年にかけて,有意に低い値を示した。歯垢の付着状態・歯肉の状態・歯石沈着の有無ともに,2013年から2015年にかけて有意に低値を示した。継続的な働きかけを経て,正しい知識の獲得が歯科疾患予防の一助となりうることが示唆された。今後も小児,保護者および教育者に適切な情報を提供し,健康教育の拡充による口腔の健康と福祉の増進に寄与していきたい。