1981 年 19 巻 3 号 p. 431-440
本症例は,舌下部に生じた先天性鰓原性嚢胞により下顎骨の変形を生じ,出生4カ月後に嚢胞摘出の行なわれた3歳0カ月の男子の症例である。
顔面所見: 通常, 大きな舌が口唇より突出し, 口裂が大きく, 流唾が絶えなかった。口腔内所見:口腔清掃状態は極めて不良で下顎前歯を除いた全ての乳歯が齲蝕に罹患しており,歯冠崩壊が著しかった。咬合状態は左右第2乳臼歯のみが接触し,高度の前歯部開咬を示していた。下顎乳前歯,永久前歯は著しく唇側傾斜を示し,下顎歯列弓全体にわたって歯間空隙が存在していた。
上顎骨は位置,大きさともに正常であったが,下顎骨は下顎骨体長が大きく,下顎体部は前下方へ大きく彎曲し,従って,gonial angleおよびmandibular plane angleが開大していた。
Egyedi-Obwegeser法による舌縮小と加えて,chin cupによる治療を行った結果,7カ月後にはすでに顔面所見の大輻な改善がみられ,下顎骨の彎曲や開咬の著しい軽減が認められた。