小児歯科学雑誌
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薄型ポリカーボネート冠を用いた乳前歯歯冠修復ならびにその臨床成績について
林 芳隆木村 興雄小野 博志
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1981 年 19 巻 3 号 p. 441-447

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抄録
審美的で操作性の良い乳前歯歯冠修復をめざして,従来のものより支台歯の削除量が少なくてすむ,薄型のポリカーボネート冠を試作した(ピドクラウン)。支台歯への装着には接着性レジン(クリアフィルFおよびSC)を使用し,ポリカーボネートとクリアフィルの間の接着には,MMA系即時重合レジンのモノマー液を用いた。この方法により,2歳から6歳までの患児23名62例を対象に,3-8カ月の経過観察を行った。
その結果,一回法で審美的に好ましい修復を行うことが可能になった。しかし冠の剥離脱落が多くみられた。支台歯とクリアフィル間で脱落したものは12例あり,6カ月以内の短期間に多く起り,支台形態が不良の生活歯に多かった。
クリアフィルと生活象牙質間の接着に問題があると思われる。クリアフィルとポリカーボネート間で剥離脱落したものは19例で,7カ月以上経過してからが多く,支台形態が良好の生活歯に多かった。これらは冠の咬耗に引き続いて起った。クリアフィルとエナメル質間の接着は良好であるが,クリアフィルとポリカーボネート間の接着(MMAモノマー液を使用)に問題があると思われる。
歯冠歯髄の失活歯では脱落例は少なかった。クリアフィルと失活象牙質間の接着は良好のようである。装着にあたっての症例の選択および術式・使用材料の改良の必要性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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