小児歯科学雑誌
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乳歯根管治療におけるイオン導入法の適用性に関する研究
渋井 尚武隅田 百登子石川 文一安田 伸行竹林 秀人
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1983 年 21 巻 4 号 p. 704-718

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抄録

感染根管治療に対する基本的な考え方は,乳歯も永久歯も変わりがなく,根管内容物の除去,根管充填のための根管拡大であると考える。しかし乳歯は解剖学的,生理的な特徴から種々の制約があり,根管の処置が永久歯に比べてより困難である事は事実である。そこで今回,乳歯の根管処置をより成功に導くための一つの手段として,イオン導入療法の可否を検討した。特に乳歯根の吸収,後継永久歯への為害性の有無,萌出過程への影響について,X線規格化写真,マイクロラジオグラムで観察した。イオン導入はアンモニア銀溶液,ヨード・ヨード亜鉛液を幼犬の乳臼歯に用い定期的に検討を加え,次の結論を得た。
抜髄後根管充填した乳歯根の吸収は,イオン導入の有無にかかわらず遅延する傾向がみられたが,特にイオン導入が吸収遅延に影響を与えるような所見は認められなかった。乳歯根の吸収遅延につれて,後継永久歯の萌出遅延の傾向が認められたが,歯胚の形成量にはあまり影響はなかった。さらに乳歯が自然脱落した後は,後継永久歯が対照側に追いつく傾向があった。乳歯の根管治療でのイオン導入療法の応用は,後継永久歯の形成および萌出に差程の影響は認められなかった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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