抄録
最近, 歯質と歯科用合金との強い接着性を有するという接着性レジンセメントが開発され,臨床に広く用いられている。特にクラレ社で開発されたパナビアEXはコンポジットレジンタイプのもので,小児歯科領域でも,主としてインレーや乳歯冠の合着に用いられている。しかし,コンポジットレジンタイプであるため,生活歯に用いる場合には,歯髄に対する影響の有無が懸念される。しかるに,パナビアEXの乳歯歯髄に対する影響についての報告は,いまだみられない。そこで今回,幼犬乳歯にパナビアEXを用い,その乳歯歯髄への影響に関して,病理組織学的検索を行った。なお,対照にはHY-Bondカルボセメントを用いた。術後の観察期間は3日,7日,14日および21日であった。
結果は次の通りである。
1.両群ともに術後3日経過例で,反応が最も強く,その後経日的に反応は消退傾向を示した。
2.その反応の程度は,パナビアEX群の方がやや強く,パナビアEXは乳歯歯髄に対して,若干刺激性を有することが示唆された。しかし,重篤な為害作用を生じるほどのものではないと思われた。