抄録
小児の咬合力と最大咬合力発現時における咀嚼筋活動について検討するために,本実験を計画した。計測項目としては,咬合力発現時の同側側頭筋および咬筋積分値(IET,IEM),最大咬合力(MBF)および発現時間(MBF Time, MBFT),最大咬合速度(Maximum Bite Speed, MBS),最大咬合速度発現時間(MBS Time, MBST)の計6項目について,これら各項目の再現性について検討した。
被検者は,乳歯列期小児3名と成人3名を用い,各被検者とも3日間にわたりデータを採取し,日内変動,日間変動および各計測項目の有効性について評価した。その結果,
1)6項目とも小児と成人で再現性が認められたが,MBFT,MBS,MBSTの3項目については,個人差および日間変動が大きい傾向にあった。
2)IET,IEM,MBF,MBSについては小児群よりも成人群が有意(p<0.005)に大きい値を示した。
3)IET,IEM,MBFの3項目については変動も小さく,1回の計測で十分評価できるものと考えられたが,MBS,MBFT,MBSTについては変動がやや大きく,この原因として主にトランスデューサーの咬み難さに問題があると考えられ,今後これらの点を改善する必要があると考えられた。