小児歯科学雑誌
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幼児に見られたエナメル上皮腫の一例
篠田 圭司蒲生 健司祖父江 英侍生野 伸一小泉 達哉藤居 明範辻 甫田村 康夫前田 光宣
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1986 年 24 巻 2 号 p. 363-368

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抄録

エナメル上皮腫は20~30歳代に好発する歯原性腫瘍で,10歳未満の小児や50歳以上の高齢者にはまれな疾患である。
今回著者らは5歳2カ月の幼児(男子)でエナメル上皮腫と診断された症例に遭遇した。
初診時,口腔内所見ではDE部頬側歯肉に弾性硬,拇指頭大の膨隆が見られ,圧痛,DEに軽度の打診痛が認められた。X線所見では,DEの根尖部に4の歯胚を含む拇指頭大の境界明瞭な円形のX線透過像が認められ含歯性嚢胞と診断した。
しかし,摘出後の病理組織学的検査の結果,嚢胞壁の結合組織内にSerresの遺残上皮と思われる歯原上皮の増殖や上皮層の肥厚,結合組織内への貫入などの所見が得られ,嚢胞性エナメル上皮腫と診断された。
本症例のように,単胞性で含歯性の場合,含歯性嚢胞とエナメル上皮腫を鑑別するには,臨床所見のみでは非常に困難な場合が多く,それらの診断に病理組織学的検査は不可欠であると言える。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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