小児歯科学雑誌
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稠度を変化させた臼歯部用コンポジットレジンに関する材料学的研究
杉山 久村上 あつ子上杉 滋子三浦 みつ子菊池 進
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1986 年 24 巻 4 号 p. 633-642

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抄録
乳臼歯の歯冠修復は近年コンポジットレジンによる修復が増加しているが,乳臼歯修復に必要な諸条件を満たした材料はみられず,種々な改良がなされてきている。そこで,我々は,操作性と材料学的性質を改善するために,臼歯部用コンポジットレジンBellfeelをベースにして,稠度を5段階に変化させたレジンを試作し,材料学的性質を検索した。
実験項目は,無機質フィラーの電顕像の観察,無機質フィラー含有率と稠度の測定,表面硬さ,圧縮強さ,引張強さ,曲げ強さ試験である。その結果,
1)試作レジンの無機質フィラーの含有率が低下すると,稠度も段階的に減少し,両者はほぼ比例関係を示した。
2)ヌープ硬さはフィラー含有率が低くなると,圧接面では低くなる傾向があり,研磨面では変化がなかった。
3)圧縮強さは試作レジン間では差がみられなかった。
4)引張強さおよび曲げ強さは試作レジン間で,フィラー含有率によって差がみられ,フィラー含有率が低下するにしたがいその値は上昇した。以上よりフィラー含有率を調整し,稠度を低下させることで,シリンジ等の操作性はより容易になった。また,研磨面の硬さや圧縮強さには特に変化はなく,引張強さ,曲げ強さでは良好な結果が得られたことから,乳臼歯2級窩洞の体部破折等の不快事項の減少にもつながると思われた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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