小児歯科学雑誌
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齲蝕罹患児の口腔より分離したStreptococcus mutansの血清型別分布,ならびにその菌体外バクテリオシン(mutacin)の活性について
西野 瑞穂今西 秀明沖田 裕治
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1986 年 24 巻 4 号 p. 765-776

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抄録
2~7歳の小児28名の歯垢および軟化象牙質からStreptococcus mutansを分離し,その血清型別分布ならびに菌体外バクテリオシン(mutacin)の活性について調べた。分離菌株数は288株で, そのうちc型は71.2%, d型は7.7%, e型は14.9%, f型と推定されるもの4.5%,g型が1.7% であった。a型, b型は分離されなかった。口腔内の齲蝕活動性が高いほど,また,齲蝕重症度が高いほど,c型以外の血清型菌株の出現が認められる傾向にあった。
菌体外mutacinの活性は, 穿刺培養法でS. sanguis ATCC 10556 R, S. sanguis OMZ9HR1,およびS.salivarius HT 9Rを指示菌とした場合222株77.1%に,滴下法で上記と同じ菌株を指示菌とした場合33株11. 5%に, 滴下法で各血清型S. mutansを指示菌とした場合30株10.4%に活性が認められた。S.sanguis, S.salivariusに対しては菌体外mutacin活性を示し, S. mutansには全く活性を示さなかった菌株が3 株あった。菌体外mutacin は, 培養液によりその活性に差がみられ, S . m u t a n s に対するmutacin活性は, Todd Hewitt brothで最も広い抗菌スペクトルを示し, 次いでTryptose Phos-phate broth, Brain Heart infusion brothの順であり,Trypticase Soy brothが最も菌体外mutacinを産生しにくかった。
指示菌S. mutansの血清型a 型およびf 型は, 多くの臨床分離S. mutans産生mutacinに感受性を示し, g型は少数のmutacinに対してのみ感受性を示した。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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