小児歯科学雑誌
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フッ素-ランタン二段処理法による乳歯エナメル質の難溶化に関する研究
宮城 敦
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1987 年 25 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
リン酸酸性フッ化ナトリウム溶液処理(F処理)後,続いて塩化ランタン溶液処理(La処理)するフッ素ーランタンニ段処理法(F-La処理)は,歯質表面に非晶質フッ化ランタンを生成させ,その耐酸性を向上させることが報告されている。本研究は,同処理法の臨床応用の可能性を検討するために,ヒト抜去乳歯エナメル質に施し,酸溶解性試験によってその耐酸効果および処理条件を検索した。また,X線マイクロアナライザーにて酸溶解性試験前後の元素分析を行い,次の結果を得た。
1)F-La処理を行った乳歯エナメル質は,未処理に比べて6倍以上,F処理単独と比べても2倍以上耐酸性が向上した。
2)乳歯エナメル質にF-La処理を適用するには,1mol/lのリン酸前処理1分間が必要であった。
3)F-La処理におけるF処理は3分間,La処理は濃度1%・3分間条件で充分な耐酸効果がみられた。
4)乳歯エナメル質にF-La処理を施すと,フッ素およびランタンが表面より約15μmの深さまで取り込まれ,酸溶解性試験後も充分残存し,歯質を保護していた。
5)乳歯エナメル質は永久歯エナメル質よりも約34%溶解性が高いが,F-La処理により同処理を行った永久歯エナメル質と同程度まで溶解性が減少する。つまり,乳歯エナメル質は化学反応性が高いことが再確認された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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