抄録
初期齲蝕エナメル質にレーザー照射あるいはレーザー照射と酸性フッ素リン酸溶液処理を併用することにより,その脱灰の進行を抑制できるか,もし抑制できるのであればその至適照射条件は何かについて検討を加えるためにヒト抜去幼若小臼歯を用いて実験を行ったところ以下の事が明らかとなった.
1)人工的初期脱灰エナメル質に種々のエネルギー密度の超音波QスイッチNd-YAGレーザーを照射して,耐酸性の変化について検討したところ,47.8J/cm2,66.9J/cm2のエネルギー密度でレーザー照射したエナメル質に耐酸性が付与されたが,28.7J/cm2照射エナメル質の耐酸性増強は認められなかった.また,レーザー照射時に生じるエナメル質の亀裂は,エネルギー密度が大きい程深いものであることがわかった.
2)人工的初期脱灰エナメル質に超音波QスイッチNd-YAGレーザー照射と酸性フッ素リン酸溶液処理を併用してエナメル質表面の耐酸性を検討したところ,レーザー照射のみあるいは酸性フッ素リン酸溶液処理のみに比して,明らかな耐酸性の増強が認められた.しかも,レーザー照射後に酸性フッ素リン酸溶液処理エナメル質にその効果が最も顕著に認められた.