小児歯科学雑誌
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下顎両側乳中切歯水平埋伏の1症例
斎藤 浩人田口 洋渡辺 ヒロ子竹内 弘美野田 忠
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1989 年 27 巻 1 号 p. 191-196

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抄録

著者らは4 歳7 カ月児における下顎両側乳中切歯の水平埋伏という珍しい症例を経験したので報告する。
患児は,既往歴・家族歴・全身状態において異常は認められなかった。初診時の口腔内は,下顎両側乳中切歯を除く全乳歯が萌出を完了していた。右側乳中切歯は完全に埋伏し,左側乳中切歯は唇側面を歯頂側に向けた状態で約2mm切縁が舌側歯肉に出ていた。両側とも唇側歯肉に硬い膨隆を認めた。レントゲン検査によって両側乳中切歯の水平埋伏が認められた。両側乳中切歯を抜去したところ,歯根がその約2分の1のところから舌側に彎曲していた他は正常な形態を有していた。病理組織的には,歯根の一部に吸収像が認められたが, エナメル質, 象牙質に異常は認められなかった。抜歯後3 年3 カ月現在, 両側永久中切歯は歯冠の約3分の2を萌出しているが,両歯とも軽度の舌側傾斜と捻転が認められ,正中は離開している。
本症例の水平埋伏の原因は不明であるが,胎生期に何等かの原因によって歯冠が舌側に傾斜し,萌出方向が異常となり充分な萌出力が得られなくなり,また舌の圧力なども作用して埋伏したと考えられる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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