小児歯科学雑誌
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バイオネーターを用いた一治験例における下顎頭位の推移について
荻原 和彦上原 正美伊藤 憲春溝呂木 英二鈴木 克政金子 敬
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1989 年 27 巻 4 号 p. 1025-1034

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抄録

歯ぎしり, ならびに上顎前突感を主訴として来院した患児( 1 1 歳8 カ月, 男児, 観察期間3 年2 カ月) に対し, 下顎歯列弓のディスクレパンシーを伴なうアングルI I 級I 類の関係を有する不正咬合と診断し,バイオネーターを使用し,咬合の挙上と下顎位の前方誘導を行い,その後,上下の歯列弓の側方拡大によってスペース不足の解消を図り,ほぼ望ましい永久歯咬合を育成することができた。この症例について,処置前後の顎関節規格写真,石膏模型,頭部X線規格写真などを資料として,処置前後の推移について比較検討した。
石膏模型の分析では,歯列弓幅径,長径の改善がなされ,第一大臼歯はアングルのI級関係に推移し,前歯の被蓋も改善された。頭部X線規格写真の分析では,歯系,骨格系において好ましい変化を示した。顎関節規格写真の分析において処置後はその値も大きくなり,平均関節腔隙は処置前の左側が小さな値を示し,関節腔隙が狭小化していたが,処置後は,さらに左右がほぼ均等性を示すようになった。また,下顎頭偏位インデックスの左右側も均等性を示すようになり,顎関節に対する下顎頭位は中心性を示すようになった。
歯ぎしりについては,処置開始後,現在に至るまで中止している。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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