1989 年 27 巻 4 号 p. 1035-1046
精神薄弱者総合援護施設「コロニーにいがた白岩の里」内の児童棟に入所した重度精神薄弱者144名(男子79名,女子65名)について,1973年から1987年までの15年間の歯科検診資料と,当科が治療を行った1980年から1987年までの8年間の治療カルテを分析し,次のような結論を得た。
1.対象の入所時DMFT指数は年齢と共に増加する傾向にあることが分かった。また,入所時の年齢別DMFT指数を昭和56年厚生省歯科疾患実態調査と比較したが,有意な差を認めなかった。
2 . ほとんどの年齢において入所時FT 指数は同調査と比較して小さく, MT 指数は大きくなった。それぞれのDMFT指数に占める割合についても危険率1%以下で有意な差を認めた。
3.1980年から1987年までの8年間の処置歯総数は740本で,その内訳ではアマルガム充填388本(52.4%),レジン充填174本(23.5%),金属冠22本(3.O%),歯内療法55本(7.4%),抜歯101本(13.7%)であった。
4 . 当科が治療を行った1 9 8 0 年以降の入所者についてみると, 入所後2 年目以降の未処置歯は一人平均0.5本以下で,喪失歯の増加もほとんど認めなかった。
5.予後成績は8年間の追跡調査期間で,予後不良のため充填から抜歯となった歯は237歯中1本(0.4%),歯内療法から抜歯となった歯は21歯中2本(9.5%)であった