抄録
近年,社会的背景を基本的因子とした医療,また,個人の一生を通じての医療ということが次第に重視されるようになってきている。
小児歯科の分野では,そのような観点から,小児期を通じての包括的歯科医療の実践に努めてきた。
報告テーマである"小児の歯の外傷"においても,小児歯科の分野では他の分野で行われてきた"外傷による損傷の処置"だけでなく,つとに子どもの全身的ならびに顎,歯列の発育への影響という観点からこれをとらえてきたことは先見性のみられるところである。
さらに,偶発的な外傷の原因についても,単なる疫学的分析にとどまらず,小児の生活行動という立場からこれをとらえる要がある。
このような見地から,私はこれまで大阪歯科大学小児歯科学講座で行ってきた歯の外傷に関する一連の研究について報告する。