抄録
子供の歯科治療時に,各人の自由意志で入室行動を選択している心身障害児患者の母親42名を対象に,母親の歯科環境に対するイメージおよびその自我意識について調査し,治療室への入室行動に影響を及ぼす母親側の要因を検索し,以下の結果を得た。
1)SD法(意味差判別法)による母親の歯科環境に対するイメージは,入室する群,入室しない群共に歯科医,我が子,歯科治療室に対して「どちらでもない」から「やや良好」であった。
2)虫歯の治療に対するイメージは,「どちらでもない」から「やや不良」であった。
3)我が子,歯科治療室に対しては,入室しない群が入室する群に比べ相対的にやや良好なイメージを持っている傾向がみられた。
4)TEG(東大式エゴグラム)の結果では,治療室に入室する群,入室しない群共にCP(父親的自我),NP(母親的自我),AC(順応した子どもの自我)が他の自我状態に比べ高いパーセンタイル値を示していた。
5)数量化II類による分析では,母親の入室行動の関連要因としてACが抽出できた。
6)入室する理由は「子供の治療時の状態や治療内容,口腔内が良くわかる」「付き添っていると子供が安心する」「子供の状態が気になり,心配」などがあげられた。
7)入室しない理由は「子供に依頼心,甘えをなくさせ一人で物事ができるようにさせたい」「子供一人で治療が受けられる」「子供の人格を尊重したい」などがあげられた。