小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
歯根破折した上顎永久中切歯に長期間の固定を試みた一症例
立川 義博國武 哲治松本 敏秀中田 稔
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 28 巻 3 号 p. 747-752

詳細
抄録
外傷により右側上顎永久中切歯が歯根破折を起こした症例(男児,11歳10ヵ月)を経験した.X線所見により,受傷歯の歯根はほぼ完成しており,歯根中央部に水平な破折線が認められた.臨床所見として,激しい動揺と疹痛があったが,歯冠側破折線の偏位はほとんど認められなかったため,スプリント固定を施した.スプリント固定を31ヵ月間行ったのち,X線的に破折線の消失を確認し,スプリントを除去した.長期間のスプリント固定にもかかわらず,歯根癒着の所見は認められなかった.
一般に歯根破折歯の固定期間は2~3ヵ月とされているが,著しい動揺のある場合の予後は好ましくないといわれている.今回の症例を経験し,激しい動揺があっても,歯髄壊死を生じていなければ,長期間のスプリント固定を行なうことで,破折部の石灰化による治癒が生じることがわかった.また本症例における石灰化による修復は,まず歯髄に隣接した破折線部から始まり,破折線に沿って徐々に歯根膜側へと進行していったことが,X線的に確認された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top