小児歯科学雑誌
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乳中切歯の萌出を妨げていた埋伏真性乳歯過剰歯の1例
久芳 陽一本川 渉小笠原 靖勝俣 真理
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1991 年 29 巻 1 号 p. 130-138

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抄録
真性乳歯過剰歯の発現頻度は永久歯と比較して極めて低いとされている.
しかもその報告は,ほとんど萌出以後のものであり,萌出以前に処置を行い乳歯列完成まで観察した報告はみられない.
患児は1歳6カ月の女児で上顎の右側乳中切歯,乳側切歯が萌出しているにもかかわらず,左側乳中切歯は見られず,乳側切歯が観察された.X線所見では,未萌出の上顎左側乳中切歯部には2本の歯牙が認められ,粘膜内で捻転を呈している状態が観察された.2本の左側乳中切歯様歯牙の歯冠歯根形態は類似し,歯根は未完成であった.
このままの状態では,左側乳中切歯様の歯牙2本とも萌出できないと考え,近心側の歯牙を抜歯した.その後,3日目に埋伏していた左側乳中切歯は萌出してきた.乳歯列完成まで観察を行った.抜歯された歯牙は,萌出してきた左側乳中切歯および先人の乳歯中切歯の平均値と比較して,歯冠長は最も大きく,歯冠幅は最も小さい値を示した.乳歯過剰歯の判定基準および歯冠歯根,歯髄腔の大きさなどから,真性乳歯過剰歯と判定した.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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