小児歯科学雑誌
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29 巻 , 1 号
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  • 内田 武, 向井 美恵, 佐々 竜二
    1991 年 29 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科治療における小児の適応性を知る目的で, 本学小児歯科外来を受診した2 歳から6歳までの小児60名について,一口腔単位の治療期間における適応の経時的推移を観察・評価した.さらに小児の性格,母親の性格,母子関係(養育態度)を知る目的で各種心理検査を行ない,各々の関連について検討し,以下の結果を得た.
    1)治療期間における適応の推移を大きく4パターンに分類した.対象児のうちその占める割合は,適応継続児45.0%,適応獲得児18.3%,不適応継続児16.7%,極度不適応児20.0%であった.
    2)2・3歳の低年齢不適応児においては,小児の性格,および母子関係に特に問題特性を認めなかった.
    3)4歳極度不適応児において,〈自主性〉〈退行性〉〈学校(幼稚園)への適応〉の項目に小児の問題特性を認め,〈不安型〉〈溺愛型〉〈盲従型〉〈不一致型〉の項目に母子関係(養育態度)の問題が見い出された.
    4)5・6歳の極度不適応児は皆無であり,不適応継続児において,小児の性格,母子関係に若干の問題特性傾向を認めた.
    5)小児の歯科治療における適応と母親の性格との間に関連を認めなかった.
  • 砂田 雅彦
    1991 年 29 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,より適切な歯髄処置を行うために,乳歯歯髄炎の波及状態を客観的に,的確に把握できる診査方法を研究することであった.
    対象は,健常児81名(2y9mから11y2mまで)において,長坂の乳歯歯髄炎の診断基準に基づいて,生活歯髄切断処置が前提とされた乳歯齲蝕歯100歯であった.これらの歯髄内血液像と摘出した冠部歯髄の病理組織像とを比較し,さらに,処置後の経過観察を行い,歯髄内血液像による乳歯歯髄炎の鑑別診断について検討した.結果は,以下のとおりであった.
    1.乳歯歯髄内血液像において,リンパ球の比率は,年齢に関係なく,末消血液像の正常値より高いものが多かったため,乳歯歯髄炎の鑑別の指標になることが示唆された.
    2.冠部歯髄の病理組織像において,炎症程度を次のように4分類した:炎症所見を認めない(-),軽度限局性円形細胞浸潤を認める(+),軽度ないし中等度瀰慢性に円形細胞浸潤を認める(++),高度瀰漫性に円形細胞浸潤を認める(〓).それぞれの症例数は,(-)0例,(+)37例,(++)47例,(〓)16例であった.
    3.各炎症程度別に,その総数に対する60%以上のリンパ球の比率の割合についてみると,(+)の86.5%と(++)の61.7%は(〓)の0%に比べてかなり高かった.
    4.各炎症程度別に,その総数に対する,冠部歯髄切断時に止血困難であった症例の割合をみると,(+)の32.4%と(++)の25.5%は(〓)の62.5%に比べて低かった.
    5.生活歯髄切断処置後の臨床的およびX線学的経過観察の結果,不良例は,(+)と(++)では,42例中12例(28.6%),(〓)では,4例中4例(100%)であった.
    6.冠部歯髄切断時,止血困難で,しかも歯髄内血液像のリンパ球の比率が57%末満である場合は,生活歯髄切断処置の適応症でないことが示唆された.
  • 足立 ちあき, 北村 京一, 加藤 一生, 吉田 美香, 森崎 市治郎, 祖父江 鎮雄
    1991 年 29 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    免疫抑制剤Cyclosporin-A(CsA)の服用者には,副作用として歯肉増殖の発現することがある.本研究では,FischerとSprague-DawleyラットにCsAを投与し歯肉増殖を発症させ, Streptococcus sobrinus の感染の歯肉意殖に及ぼす影響について検討した.その結果,1.CsA投与群ラットの下顎臼歯部には,著明な歯肉増殖が誘発された.この歯肉増殖の程度は,舌側より頬側歯肉の方が有意に高く,両系統ラット間で歯肉増殖に差は認められなかった.2.歯肉増殖は,CsA投与25日後で確認され,40日後でほぼ最大になった.また,この歯肉増殖はSprague-Dawleyラットの方がFischerより早期に発現する傾向を示した.3.CsA投与によりプラークの沈着が増強されたが,S.sobrinus感染は歯肉増殖の程度に影響を与えなかった.4.増殖歯肉の組織標本では,両系統ラットとも,細胞間質の線維性結合組織の増生が確認された.以上,CsAによる歯肉増殖が実験動物系で確立できたことから,これは本症病態の解明に有効な手段になるものと考えられる.
  • 細矢 由美子, 中村 則子, 加島 知恵子, 安藤 匡子, 池田 靖子, 高風 亜由美, 松井 貴志, 後藤 讓治
    1991 年 29 巻 1 号 p. 32-43
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛幼若永久歯切削エナメル質に対するレジンの接着性について,サーマルサイクリグ試験の影響をエッチング時間別に観察した.
    40%正燐酸ゼリーで,0, 10, 20, 30及び60秒間エッチングを行った.レジンは,クラレ社製 Photo Bond と Photo Clearfil A を使用した.サーマルサイクリング試験後に剪断接着試験を行い,接着強さを測定するとともに,剪断試験後のエナメル質面とレジン面をSEMで観察し,下記の結論を得た.
    1)接着強さが最も高かったのは,エッチング時間が30秒(45.21±8.50MPa)の場合であった.
    2)エッチングなし群とすべてのエッチング時間群間の接着強さに有意差がみられ,エッチング群が高かった.
    3)エッチング群については,エッチング時間が20秒の場合とエッチング時間が10秒, 30秒及び60秒の場合の接着強さ間に有意差がみられ,いずれの場合も20秒で低い値を示した.
    4)サーマルサイクリング群と非サーマルサイクリング群の接着強さをエッチング時間別に比較すると,エッチング時間が10秒, 30秒及び60秒の場合における両群間の接着強さに有意差がみられ,サーマルサイクリング群の方が高かった.
  • 木村 光孝, 空田 安博, 矢野目 鎮照, 秀島 治, 横本 満, 周 適宏, 吉居 英一, 富岡 健太郎
    1991 年 29 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    水酸化カルシウムを主成分として根管内で硬化し,しかも根尖組織中で吸収性を期待できる材料としてアルミン酸カルシウム系の根管充填材を試作した.そこで,その安全性のスクリーニングとして2種類の細胞毒性試験法により評価を行い,現在市販されているカルビタール(CV),キャナルス(CA),根管充填用ネオダイン(ND)と比較した.その結果,
    1.HeLa 細胞とミリポアフィルターを介して接触した場合,試作品3種はCVと同様に投与時間に関係なく中等度の細胞毒性を示したが CA, ND は経時的に毒性が増大し投与24時間後において強い細胞毒性が認められた.
    2.試作品3種の L-929 細胞の増殖に対する毒性の主な因子は水酸化カルシウムによる強アルカリ性によると考えられ,その毒性度は配合した水酸化カルシウムの量に影響された.
    3.試作品3種の細胞増殖に及ぼす影響は CV より小さく CA や ND では見られた培養後期での細胞増殖抑制の発現は認められなかった.
    以上のことから,今回試作した根管充填材は比較対照とした市販品と同等以上の細胞親和性を示し,根管充填材として有用であると考えられた.
  • 大下 智友美, 小出 武, 深尾 正, 山賀 まり子, 高原 俊之, 稗田 豊治
    1991 年 29 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    矯正歯科治療において,ブラケットを接着したエナメル質に齲蝕を認めることがある.このような齲蝕を予防するため,一定量のフッ素を徐放するとともに,ブラケット下とブラケット周囲の歯面に保護層を作るフッ素徐放性矯正用光重合型ボンディング材が開発された.本研究では米国で市販されている Ormco 社の FluoroBondTM をブラケット装着時のボンディング材として応用することを想定して, in vitro でヒトエナメル質に作用させ,同エナメル質へのフッ素の取り込みについて検討し以下の結果を得た.
    1)フッ素徐放性矯正用光重合型ボンディング材から放出されるフッ素量は多く,10日目までは経日的に減少し,それ以降は減少の程度は弱くなった.
    2)同ボンディング材と接触したエナメル質に取り込まれたフッ素は,エナメル質の表層部で多く認められ,深部にも浸透していた.
    3)同ボンディング材を用いてブラケットを接着し,作用させたところ,塗布部の他に,その周囲でも,フッ素の取り込みが認められた.
  • 尾崎 正雄, 石井 香, 久保山 博子, 尾崎 安彦, 本川 渉
    1991 年 29 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,佐賀県佐賀郡富士町において1987年と1989年に同地区教育委員会の協力で行った歯科実態調査資料を基に行われた.対象は,1987年に行った全小学生の調査資料を中心として,1989年の調査によって経年的資料が得られた者,男子208名,女子165名,計373名を研究対象とした.この資料を基に永久歯齲蝕増加および生活環境因子と性格傾向との関連を調査したところ,以下のような知見を得た.
    1)齲蝕増加と性格傾向との直接的な関連は低いものの,数量化III類による分析において自主性,退行性,神経質,および不安傾向と関連性があることが判明した.
    2)生活環境因子と性格傾向との関連分析では,齲蝕増加項目に反応する小児ほどの性格の不良傾向が認められた.
    3)特に,自制力および自主性などの項目に性格傾向上の歪みが認められた.
    4)また,この傾向を小学校前期と後期とで比較すると,小学校後期の方が性格傾向上の歪みが大きかった.
    以上の研究結果より,小児の性格傾向と齲蝕増加に関係する生活習慣上の問題点との関連性が指摘された.
  • 中川 さとみ, 外木 徳子, 久保 周平, 町田 幸雄, 奥田 克爾, 高添 一郎
    1991 年 29 巻 1 号 p. 72-85
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    成人の歯周疾患の発症と進行に関連する黒色色素産生性Bacteroidesを中心とした特定のグラム陰性菌種に着目し,小児の歯齦縁下試料中におけるそれらの出現頻度と臨床所見との関連について観察を行った.被験部位を歯齦炎群,正常群に分け,さらに被験者を幼児期12名,学童期12名および思春期12名の3グループに分けて観察し,比較検討を行った.
    その結果,以下の結論を得た.
    1.同じ歯齦炎群でも幼児期,学童期,思春期の3つのグループでは歯齦縁下試料中の歯周疾患関連細菌の比率および出現頻度は異なっていた.
    2.黒色色素産生性Bacteroidesは歯齦炎群の小児の全ての部位から検出された.
    3.Bacteroides gingiualisは36名中1名(12歳の女児)の歯齦炎部位2部位から検出された.
    4.Bacteroides intermediusは歯齦に炎症が認められるほとんど全ての部位に(36部位中35部位)存在し,思春期には有意に増加していた.
    5.Actinobacillus actinomycetemcomitansB.gingivalisに比べて,より早期に口腔内に定着するものと考える.
    6.Eikenella corrodensは学童期と思春期の歯齦炎に関連しているが,Fusobacteriumnucleatecmは3つのグループとも強い関連性は認められなかった.
    7.Spirochetesは3つのグループともGI, PlI, PPDといった臨床所見と関連を示し,臨床所見が悪化するにつれて着実に増加した.また,歯齦炎部位では年齢層が上がるにつれて有意に増加した.
  • 山本 益枝, 宮崎 結花, 三浦 一生, 長坂 信夫
    1991 年 29 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々はスポーツドリンクの脱灰能とそれに影響を及ぼす要因との関連を明らかにする目的で,スポーツドリンクの性状分析と,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量測定を行い,以下のような結果を得た.
    1)スポーツドリンクのpHは,2.91~4.07であった.
    2)スポーツドリンクの主糖質量は3.24~5.95%であり,糖質の種類は,Sucrose, Glucose, Fructoseが主となっているが,その割合は,各スポーツドリンクによって異なっていた.
    3)スポーツドリンクによるハイドロキシアパタイトからのCa溶出を経時的に観察し,スポーツドリンクの H, Ca濃度と, 溶出パターンの関係を検討すると, 攪拌時間1分及び5分では,スポーツドリンクのpHとCa溶出量との間に負の相関を,また,10分及び20分ではスポーツドリンクのCa濃度とCa溶出量との間に負の相関を認めた.
    4)スポーツドリンクに糖質を添加しても,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量に影響は認められなかった.
    従って,歯牙がスポーツドリンクに接する初期の段階においては,pHの低いものほど歯牙脱灰量は多く,また,歯牙が長時間同じスポーツドリンクに浸漬されているような場合には, そのCa濃度が低いものほど歯牙脱灰量は多いと考えられる.
  • 吉田 俊彦, 青野 亘, 南 貴洋, 武井 勉, 泉谷 明, 大嶋 隆, 祖父江 鎮雄
    1991 年 29 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    スタキオースおよびラフィノースを主成分とする精製大豆オリゴ糖(SOR)の齲蝕誘発能をin vivo, およびSPFのSprague-Dawley (SD)系ラットを用いた実験齲蝕系で調べた.その結果SORは,Streptococcs csmutans MT8148R 株に利用され酸を産生したが,Streptococcus sobrinus 6715株には利用されず難発酵性であった.また, 上記両菌株より得られた粗酵素グルコシルトランスフェラーゼ(Crude GTase)による,SORからの非水溶性グルカン合成はいずれもほとんど認められなかった.しかし,これらCrude GTaseによるスクロースからの非水溶性グルカン合成に対して,SORは明確な抑制作用は示さなかった.S.sobrinus 6715株を感染させたS D 系ラットを用いた実験系において,SORの齲蝕誘発能はきわめて弱く,スクロースに比べて明瞭に低かった.
  • 石倉 優香
    1991 年 29 巻 1 号 p. 102-129
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    後継永久歯胚と咬合力が乳歯の歯根吸収に及ぼす影響を調べるために,ビークル犬を用い,下顎第2乳臼歯を被験歯とし,後継永久歯胚が有る群と摘出した群に分け,さらにそれぞれを咬合力が正常な群と軽減した群に分け,4つの実験群を設定し,経時的にX線学的に観察するとともに組織学的に観察し,以下の結論を得た.
    1)歯胚が有る場合は,歯胚の萌出に伴い歯胚に近接した歯槽骨および乳歯根に歯胚外形にほぼ一致した吸収がみられるが,乳歯根の約1/2が吸収されると,歯髄側に多数の破歯細胞が出現し,乳歯の内部からも吸収が進行し,後半では吸収の進行が速い.
    2)歯胚を摘出した場合は,歯根表面の吸収がゆっくりと進行し,歯胚が有る場合に比べ吸収の進行は遅い.しかし歯根表面の吸収が歯髄に達すると,歯髄側全面から一斉に吸収が開始して,ごく短期間のうちに脱落に至る.
    3)咬合力を軽減すると,歯胚が有る場合は,吸収の後期に吸収の進行が遅延した.歯胚を摘出した場合は,咬合力が正常でも軽減した場合でも,個体により吸収速度が大きく異なり咬合力による影響は認められなかった.
    4)全ての実験群で,後継永久歯胚の影響を受けないと考えられる部位で浅い吸収窩が認められ,この吸収窩は日齢の増加とともに広い範囲でみられた.この吸収は吸収期と休止期を繰り返し,吸収が休止した吸収窩はセメント質様組織で修復される.
  • 久芳 陽一, 本川 渉, 小笠原 靖, 勝俣 真理
    1991 年 29 巻 1 号 p. 130-138
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    真性乳歯過剰歯の発現頻度は永久歯と比較して極めて低いとされている.
    しかもその報告は,ほとんど萌出以後のものであり,萌出以前に処置を行い乳歯列完成まで観察した報告はみられない.
    患児は1歳6カ月の女児で上顎の右側乳中切歯,乳側切歯が萌出しているにもかかわらず,左側乳中切歯は見られず,乳側切歯が観察された.X線所見では,未萌出の上顎左側乳中切歯部には2本の歯牙が認められ,粘膜内で捻転を呈している状態が観察された.2本の左側乳中切歯様歯牙の歯冠歯根形態は類似し,歯根は未完成であった.
    このままの状態では,左側乳中切歯様の歯牙2本とも萌出できないと考え,近心側の歯牙を抜歯した.その後,3日目に埋伏していた左側乳中切歯は萌出してきた.乳歯列完成まで観察を行った.抜歯された歯牙は,萌出してきた左側乳中切歯および先人の乳歯中切歯の平均値と比較して,歯冠長は最も大きく,歯冠幅は最も小さい値を示した.乳歯過剰歯の判定基準および歯冠歯根,歯髄腔の大きさなどから,真性乳歯過剰歯と判定した.
  • 船越 禧征, 篠原 稔, 犬石 隆人, 森谷 泰之, 稗田 豊治
    1991 年 29 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    重症先天性心疾患の1つである純型肺動脈閉鎖症は,肺動脈弁が完全に閉鎖しており,二心室をもち,心室中隔に欠損がなく,さらに動脈管が開存している比較的まれな先天性心疾患である.
    先天性心疾患児なかでも重度のチアノーゼ性心疾患児は乳幼児期から心臓にかかる負担を軽減するため運動制限がはじまり,また泣くこと,暴れることなど子供本来の動きが抑制される.そのため,保護者は過保護に陥る傾向にある.さらに,重症心疾患児では乳幼児期より再三の入退院を繰り返したりして種々の医療行為がなされるので精神情緒面からも多くの問題点を含んでいる.
    歯科治療の面からみて先天性心疾患児の全身麻酔下歯科治療の適否に関しては種々議論のあるところであるが,歯科治療によって患児にもたらされる効果と,麻酔に対する侵襲の危険性の両面から,十分に検討する必要がある.そして,全身麻酔を用いることが,患児の精神的,身体的負担を軽減し,歯科治療が無理なく,しかも安全に行いうる場合のみ実施するようにしなければならない.
    今回, E 疼痛を主訴として歯科外来を受診した純型肺動脈閉鎖症を有する4歳4カ月の女児に全身麻酔を用いて歯科治療を行った.
    全身麻酔にあたって,内服しているジゴキシンは術前24時間に投与を中止し,また,抜歯処置を予定していたため,術後の細菌性心内膜炎の発症を予防する目的で,術24時間前よりペニシリン系坑生物質の投与を行った.手術室に入室後は各種モニターを装置し,特にパルスオキシメーターにより,低酸素状態を慎重に監視して全身麻酔を行った.麻酔はケタミン, セルシンを用いたN . L . A . 変法によって行った.術中, 循環系, その他に異常なく1時間15分で歯科治療を終了した.麻酔時間は1時間45分であった.
    麻酔終了後はしばらくの間,酸素テントを使用したが,呼吸,循環系に著変はなく,術後の経過も良好で術翌日に無事退院した.
  • 篠原 稔, 小出 武, 高石 佳知, 稗田 豊治, 船越 禧征, 井上 純一, 尾上 孝利, 福島 久典, 佐川 寛典
    1991 年 29 巻 1 号 p. 144-153
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病の入院強化療法時に真菌優位の菌交代現象を呈した満7 歳1 0 カ月の男児の口腔内を観察するとともに,口腔常在細菌叢の経日的変化についても検討し,以下の結果を得た.1)抗白血病剤投与による白血球数の減少に一致して,口腔内に歯肉炎が観察された.2)血小板数の減少に一致して,歯肉炎部からの出血が著明に認められ,血小板の輪血と共に改善された.3)末梢血液検査所見の改善と共に歯肉炎は軽快した.4)口腔内総菌数は,感染に対して投与された抗生物質により減少し,真菌優位の菌交代現象が認められた.5)菌交代現象の前後に,歯肉炎症状の著しい変化はなく,典型的なカンジダ性口内炎の症状はみられなかった.
  • 小野 美紀子, 前田 隆秀, 谷 博司, 栗原 洋一
    1991 年 29 巻 1 号 p. 154-158
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯のFormocresol による生活歯髄切断法(FC法)の予後は,臨床的には極めて良好であるが,X線的評価では著しく低下するとされている.これは,小児においてはFC法の適応症と診断する情報が得にくいことによると思われる.栗原は歯根安定期のX線写真による乳歯FC法適応症の判定基準について報告を行った.
    今回著者らは,被検歯を歯根安定期から歯根吸収期に拡大し,下顎乳臼歯26歯を被検歯とし,また,対照として,歯槽白線を一部消失している下顎乳臼歯4歯を用いFC法を行い,術前と術後6カ月の臨床的,X線学的観察を行った.その結果
    1)被検歯とした下顎乳臼歯26歯の術後X線学的観察では,80%が良好であった.
    2)対照とした下顎乳臼歯4歯はX線学的観察では全て不良であった.
    3)術前のX線学的判定基準の中では,歯槽白線の所見が術後の良否に重要であった.
    4)歯根吸収期の乳歯のFC法施術歯の予後の観察は歯根安定期の施術歯より一層慎重でなければならないことが示唆された.
  • 篠原 稔, 船越 禧征, 高石 佳知, 稗田 豊治
    1991 年 29 巻 1 号 p. 159-166
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    軟骨無形成症は四肢短縮型の小人症を主症状とし,著明な顔面,頭蓋の成長障害を伴う疾患で,主に家族性,遺伝性にみられる.本疾患の名称は長い間,胎児性軟骨異栄養症と呼ばれていたが,Parrotがクル病およびその他の低身長疾患から分離して軟骨無形成症として初めて報告し,それ以後この名称が広く用いられている.
    本症はこれまで整形外科,内分泌領域からの報告は散見されるが,歯科領域からのものはほとんどみられない.今回,私たちは軟骨無形成症と診断された女児を観察し,以下の所見を得た.
    1)咬合状態は,前歯部に開咬がみられた.
    2)口蓋についての異常はみられなかった.
    3)歯の形態や数および歯の成長については異常は認めなかった.
    4)舌にやや肥大傾向がみられた.
    5)側方頭部X線規格写真による角度分析,および距離分析の結果,頭蓋底の成長阻害が認められ,相対的下顎前突を呈していた.
  • 篠口 杏子, 佐賀 義博, 小口 春久
    1991 年 29 巻 1 号 p. 167-173
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,初診時7歳の男児において上顎左側第2乳臼歯が埋伏した症例に遭遇した.初診時のX線写真上では埋伏している上顎左側第2乳臼歯の歯冠は上顎左側第1大臼歯の近心根の根尖部に認められた.上顎左側第2小臼歯の歯胚は上顎右側第2小臼歯と比較してその位置および形態に明らかな相違は認められなかったが,通常の乳歯とその後継永久歯との位置関係がX線写真上において全く逆転していた.また,上顎左側第2小臼歯の歯胚と重なって,米粒大のX線不透過像が認められた.近心傾斜していた上顎左側第1大臼歯の遠心移動を行った後,このX線不透過性の歯牙様硬組織を摘出し,さらに上顎左側第1大臼歯の歯根の完成後,埋伏していた上顎左側第2乳臼歯の摘出を行った.病理組織学的所見より歯牙様硬組織は過剰歯が疑われた.摘出した上顎左側第2乳臼歯の歯冠は萌出している上顎右側第2乳臼歯と比較して大きさ,形態において明らかな相違は認められなかった.上顎左側第2小臼歯はX線写真上においては上顎右側第2小臼歯とほぼ同様な萌出過程を経ており現在は観察中である.
    本症例において上顎左側第2乳臼歯が埋伏した原因は,上顎左側第2小臼歯の歯胚と並んで存在していた過剰歯が上顎左側第2乳臼歯の歯胚と上顎左側第2小臼歯の原基の顎骨内での正常な動きを障害したためと推測される.
  • 原 昌伸, 外間 美由紀, 栗原 洋一
    1991 年 29 巻 1 号 p. 174-180
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは, 本学小児歯科部を受診した,3歳11カ月の女児の上顎右側乳側切歯部に後継過剰歯胚をともなった,真性乳歯過剰歯の1症例に遭遇した.
    家族歴,既往歴,全身所見には特記すべき事項は認められない.
    口腔内所見は右側乳中切歯と右側乳犬歯の間に2本の歯を認め,いずれも乳歯列内にあり色調,形態,大きさともに正常乳側切歯に類似していた.
    X線診査から,過剰歯にも後継歯胚が存在していた.
    乳歯過剰歯と永久歯過剰歯の判別について文献的考察を行い,さらにX線不透過度による判定の有用性を示唆した.
    現在,大きな歯列不正はないが後継過剰歯胚があることから,長期観察が必要であることが示唆された.
  • 村上 充子, 新谷 誠康, 泉谷 明, 大嶋 隆, 祖父江 鎮雄, 石田 武
    1991 年 29 巻 1 号 p. 181-185
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎右側乳中切歯の萌出遅延を主訴として来院した4歳6カ月の男児を臨床的およびX線的に診査し,集合性歯牙腫による乳歯の萌出障害と診断した.この歯牙腫を外科的に摘出した後,病理組織学的検索を加えたところ,嚢胞壁の上皮層にghost cellの出現と石灰化物の沈着が認められ,歯牙腫を伴う石灰化歯原性嚢胞と診断された.処置後,7カ月を経過しているが,埋伏乳中切歯の萌出は認められない.
  • 山崎 要一, 早崎 治明, 緒方 哲朗, 中田 稔, 浜野 良彦
    1991 年 29 巻 1 号 p. 186-195
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本学小児歯科外来で, 5 歳8 カ月時より経過観察を行っている右側の顔面半側肥大症に罹患した女児について,9歳2カ月時に歯列咬合状態,顎関節部のX線学的所見等に加えて,歯の接触関係,下顎運動測定など顎口腔機能の面から解析を行ったところ,以下の結論が得られた.
    1.上顎歯列弓は,ほぼ対称的な形態であったが,下顎歯列弓は上下的に複雑に歪んでおり,下顎自体の左側方への偏位が大きいため,切歯部から左側臼歯部にかけて著しい交叉咬合を呈していた.
    2.咬頭嵌合位,左右側方咬合位における歯の接触は,いずれも右側に多く存在しており,左側はほとんど接触していなかった.
    3.下顎運動所見において,前方滑走,左右側方滑走,最大開閉口のいずれの運動においても,右側顆頭は左側よりも関節窩内での滑走量が小さく,回転主体の運動を行っているものと考えられた.
    4.右側顎顔面の肥大により,歯の接触が右側に集中した歯列咬合状態となり,右側のみの片側咀嚼が長期化したため,主咀嚼側の顎関節に復位性関節円板前方転位を引き起こし,下顎運動にも特徴的な変化が現われたものと推察された.
  • 1991 年 29 巻 1 号 p. 197-264
    発行日: 1991/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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