小児歯科学雑誌
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同一個体における乳歯列期齲蝕活動性試験の混合歯列期・永久歯列期齲蝕罹患状況への予測性について
黒川 泉下岡 正八
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1991 年 29 巻 4 号 p. 791-813

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抄録

歯科医療体制の整わない地域の同一個体小児の9年間における経年的な齲蝕罹患状況を分析した.さらに齲蝕活動性試験(カリオスタット)が,齲蝕罹患状況を予測する目的で,同一個体の齲蝕活動性とその後の齲蝕罹患状況とその関連を検討した結果,以下の結論を得た.
1)齲蝕罹患状況は,乳歯・永久歯とも県平均より高い値であった.齲歯数の経年的変化では,6歳前後が最も多く,11歳頃まで減少し,その後また増加する傾向を示した.
2)カリオスタットの判定結果により,最も齲蝕活動性の高い時期は6,7歳であり,またCSIを指標とした時,実施時点の齲蝕虫罹患状況を最も良く表現していた.
3)乳歯列期のカリオスタット判定結果とCSI・df+DMF歯数は,混合歯列開始から4年後まで正の相関が認められ,その後相関は消失し,永久歯列完成時には再び認められるようになった.DMF歯数とは永久歯萌出開始時から3,4年後まで,また永久歯列完成1,2年前より関連性が認められた.
4)混合歯列期のカリオスタットの判定結果は,永久歯列期の齲蝕罹患状況と相関が認められた.特に,永久歯萌出開始時の判定結果と最も有意な正の相関が認められた.
以上より,乳歯列期および混合歯列期,特に永久歯萌出開始時のカリオスタットの判定結果は,永久歯列期の齲蝕罹患状況を予測する指標として有効であることがわかった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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