抄録
コンポジットレジン充填において行われる酸処理法において,エナメルエッチング(EE)とトータルエッチング(TE)の歯髄への為害性の差異に関して,幼犬乳歯にClearfil-Posteriorを用い,術後3日から35日までの各期間において,病理組織学的に検索したところ,以下のような結果を得た。
1)窩底象牙質の厚径は種々のものがあったが,歯髄変化と窩底象牙質厚径との間には関連性はなく,厚径の厚薄に関係なく歯髄反応は類似した経過を示していた。
2)病理組織学的変化は,EEとTEの両群において大差はなく,両群ともに術後7日目までは炎症性変化が認められたものの,14日目以後では変化は消退し,修復反応の出現が認められた。
以上より,エッチングによる歯髄への刺激性は少なく,しかもエナメルエッチングとトータルエッチング間に差が認められなかった。また歯髄における炎症性反応も軽度のものが多く,みられた反応も早期に消退していた。なお形成された修復象牙質も緊密な構造をしているものが多かったことから,コンポジットレジン(Clearfil-Posterior)自体の刺激性も少ないと考えられた。