近年,小児は硬い食品を嫌い,柔らかい食品を好み,食物摂取機能の劣化の傾向にあることが報告されている。我々臨床家においても小児の咬合異常,歯牙と顎骨のdiscrepancyの問題には頻繁に遭遇する。このような流れの中で小児の顎骨への物理的刺激量を知るために,今回我々は咬合力と咀嚼能力を知る目的で,九州歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した3歳から5歳までの小児80名を対象に咬合力と咀嚼能力を測定し次のような結果を得た。
1.咬合力の平均値は男児において3歳14.00 kg,4歳15.64 kg,5歳21.33kg,女児においては3歳13.70kg,4歳15.21kg,5歳20.40kgであった。年齢とともに咬合力は増加傾向にあった。
2.咀嚼能力はATP穎粒剤を使用し,30回被験児に咀嚼させた後,分光光度計で測定した。平均値は男児において3歳0.096Abs,4歳0.113Abs,5歳0.127Abs,女児においては3歳0.092Abs,4歳0.111 Abs,5歳0.117Absであり,加齢とともに増加傾向であった。また,検量線を作製後(Y=0.726X)%に換算したところ,男児においては3歳は7.00%,4歳は8.20%, 5歳は8.47%であり,女児においては3歳は6.69%,4歳は8.05%, 5歳は8.49%であった。
3.咬合力と咀嚼能力の相関係数は全体では0.635であった(P<0.01)。年齢別の相関係数は,3歳児r=0.613,4歳児 r=0.332, 5歳児r=0.550であった。
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