抄録
著者らは8歳女児で上顎右側中切歯の萌出遅延を主訴として来院した患児を経験した。口腔内X線写真により上顎前歯部の乳中切歯歯根の周囲に数片の不透過像を認めたので摘出術を施行した。処置は局所麻酔下で,上顎右側乳中切歯の抜歯を行い,同時に歯肉を剥離して歯槽骨の一部を削除しながら小硬固物を摘出した。これらの硬固物は一塊として摘出できず,大小不同の歯牙様硬固物4個からなっており,病理組織学的に歯牙腫と診断した。
歯牙腫は上顎右側乳中切歯歯根部に近接しており,しかも抜去された乳歯歯根には歯牙様硬組織の異常突起と歯根形成不全が存在し,歯牙腫との関連が疑われた。