抄録
歯科医療体制の整わない地域の同一個体432名を対象に,出生年度別,歯種・歯群別の萌出歯および齲蝕罹患状況を分析した。さらに永久歯萌出開始時の齲蝕活動性試験(カリオスタット)の判定結果が永久歯歯種・歯群別齲蝕罹患状況の予測に有効であるかを検討した結果,以下のような結論を得た。
1)最も早期に齲蝕に罹患する歯種は下顎第一大臼歯で,次いで上顎第一大臼歯であった。齲蝕に罹患しにくい歯種は下顎犬歯,上顎犬歯,下顎切歯群の順であった。
2)出生群別では,出生の遅い群で齲蝕罹患の低い傾向があり,第一大臼歯,上顎切歯群,小臼歯群にみられた。特に,萌出3年目以降の第一大臼歯に顕著であった。
3)永久歯萌出開始時のカリオスタット判定結果とDMF比は,齲蝕罹患の高い歯種・歯群で正の相関が認められ,逆に,齲蝕罹患の低い歯種・歯群では相関が認められなかった。
4)D比・F比との相関は,歯種・歯群により異なった様相を呈した。上顎小臼歯群,第一・第二大臼歯では,齲蝕罹患後の齲蝕の処置状況とほぼ一致した正の相関が認められた。
5)下顎小臼歯群は,経年的に齲蝕の増加を示したが,DMF比,D比,F比とも相関はわずかであった。
以上より,永久歯萌出開始時のカリオスタットは,歯種・歯群別の経年的な永久歯齲蝕罹患状況を予測する指標として有効であることがわかった。