小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
小児の口腔軟組織疾患の年齢的な変化
とくに歯肉炎について
甘利 英一
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 30 巻 5 号 p. 867-881

詳細
抄録
本論文は,小児歯周組織の時経的な変化を知る目的で,昭和63年度日本歯科医学会委託研究費で1 3 大学の小児歯科学講座が, 1 歳6 カ月, 3 歳, 6 歳, 9 歳および1 2 歳児の総計6,114名の小児を,同一判定基準に基づいて野外調査を行ない,歯周疾患の罹患状態を疫学的に検索した。
とくに歯肉を中心とした口腔軟組織は,歯列や咬合によって影響を受けるため,歯の萌出や配列による歯肉の影響に対しての検討を目指した。
観察部位は,年少児の診査も考えて上下顎乳・永久歯の中切歯,犬歯の近遠心,唇舌側中央の辺縁歯肉と正中部の歯肉乳頭である。
野外調査からは次の結果が得られた。
歯肉炎の罹患者率は1歳6カ月児ですでに31.9%である。
以後,罹患者率は次第に増加するが,症状は軽度で,歯垢付着と歯肉炎との相関が年少児では明確でない。
年少児の歯垢と歯肉炎との関係は,成人とは異なり,歯肉の歯垢への抵抗性,または歯垢の病原性の弱さによるものと考えられる。
歯肉炎の増悪傾向は,6歳児から見られ,12歳頃には歯石沈着も認められるようになり,成人の歯周疾患の基礎ができ初めてくると考えられる。
さらに,年小児の診査方法,検索方法の改善が必要と思われた。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
次の記事
feedback
Top