1994 年 32 巻 5 号 p. 955-971
本研究はフッ素徐放性コート材(KFC-510システム)を歯冠隣接面の健全歯面あるいは初期齲蝕(C0ないしC1)罹患歯面に塗布することによって,これらの歯面への齲蝕の侵襲ないし,齲蝕進行を阻止する臨床手技を確立し,この方法の有効性と安全性そして臨床的有用性を検討することを目的とした.
視診,触診に加えて咬翼エックス線写真を主体としたエックス線写真所見から,適応症例と診断された歯面95症例にフッ素徐放性コート材を塗布して,1か月後および3か月後の所見を観察し,対象歯面の齲蝕罹患状態,齲蝕進行程度,コート材の保持状態ならびに材質の変化を診査するとともに,塗布歯面周辺の歯肉縁,口腔粘膜への影響を診査した.
臨床試験成績の総合評価は良68症例(71.58%),可24症例(26.26%),そして修復処置に移行した不可のものが3症例(3.16%)であった.これらの結果は,本臨床手技が,乳歯,永久歯の隣接面,単独面(直達し得る隣接面)に対して,齲蝕の予防ならびに進行抑制手段として臨床的に有用かつ安全であることを示すものであり,本法の臨床的有用性を示すものと判断された.