小児歯科学雑誌
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ヒト歯槽骨由来細胞の増殖・分化に関する研究
河野 英司
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1995 年 33 巻 1 号 p. 54-67

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抄録
正常ヒト下顎歯槽骨から,bone explantationによりヒト歯槽骨由来細胞(humanalveolar bone-derived cells;HAB cells)を分離・培養した. 異なるdonorから得た細胞HAB-1~4に対し,骨芽細胞分化形質マーカーの検索を行い,以下の結果を得た.
(1)HAB-2,HAB-3およびHAB-4は通常培養条件で高いアルカリ・ホスファターゼ(ALP)活性を有していた.
(2)100nMデキサメタゾンおよび5nM 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は,HAB cellsのALP活性を有意に上昇させた.
(3)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する細胞内サイクリックAMPの応答は通常培養条件では見られなかったが,100nMデキサメタゾン添加培養条件ではHAB-2,HAB-3およびHAB-4においてPTHに応答した細胞内サイクリックAMPの上昇が観察され,PTHレセプターの発現が示唆された.
(4)長期培養下では,HAB-2,HAB-4においてvon Kossa染色で濃染する石灰化基質の形成が認められた. 細胞外基質の合成と成熟にはL-アスコルビン酸の存在が必要であることが示された.
以上の結果より,HAB-1は骨芽細胞としての形質を持たないが,HAB-2,HAB-3,およびHAB-4は骨芽細胞様の分化形質を有しており,HAB cellsはヒト歯槽骨研究のための培養系研究モデルとして有用であると思われた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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