小児歯科学雑誌
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33 巻, 1 号
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  • 後藤 讓治, 張 野, 一瀬 暢宏
    1995 年 33 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ヒト永久臼歯の歯頸部頬側にCervical pulp horn(歯頸部髄角)が存在することは既に報告されているが,乳臼歯の歯頸部頬側におけるCervical pulp hornの存在に関する研究は,これまでに全くなされていない. そこで,抜去乳臼歯40歯を用い,歯髄腔のレプリカ模型より,Cervical pulp hornの有無の確認,発現状況,発現部位,形態等について,観察を行った.
    1)抜去乳臼歯40歯中の15歯(37.5%)の歯頸部頬側にCervical pulp hornの存在を認めた.
    2)Cervical pulp hornの発現部位は,中央部に観察されたものが最も多く,15歯中7歯(46.7%)であった.
    3)Cervical pulp hornの分布状態としては,模型研削面200面中の23面にCervicalpulp hornの存在が認められた. そのうち1歯あたり何面かに連続して観察されたものもあったが,1面だけに観察されたものが最も多く,15歯中9歯(60.0%)であった.
    4)Cervical pulp hornの角度を計測した結果,平均131.7°であり,第1乳臼歯と第2乳臼歯との値の間には統計学的有意差はなかった. 5)Cervical pulp hornの深さを計測した結果,平均0.32mmであり,第1乳臼歯と第2乳臼歯との値には有意差は認められなかった.
  • 特に顔幅に対する眼の割合
    清水 良昭, 佐藤 直芳, 吉村 譲, 巣瀬 賢一, 鈴木 昭, 吉田 美香子, 千葉 悦子, 五嶋 秀男, Rosalia Contrer ...
    1995 年 33 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Down症候群の顔貌の特微を数量的に捉え明確にすることを目的に,Down症候群者,健常者男女各15名を対象に,モアレトポグラフィー法を導入し三次元的解析を行い,中顔面,下顔面の表面積,体積を計測して,顔貌の特徴は中顔面特に眼周囲にあることを報告した.その結果を踏まえ本研究は内眼角間距離,瞳孔間距離,外眼角間距離,眼裂の大きさ,顔幅を計測し,また顔幅に対する各々の計測値の割合を求め次の知見を得た.
    1)Down症候群者の内眼角間距離は健常者とほぼ同様であった(Down症候群者平均33.82mm,健常者平均35.03mm). 顔幅に対する内眼角間距離の割合は健常者とほぼ同様であった(Down症候群者平均26.97,健常者平均27.54).
    2)Down症候群者の瞳孔間距離は健常者と比較して狭かった(Down症候群者平均52.70mm,健常者平均59.70mm). 顔幅に対する瞳孔間距離の割合は健常者に対して小さかった(Down症候群者平均41.99,健常者平均46.94).
    3)Down症候群者の外眼角間距離は健常者と比較して狭かった(Down症候群者平均81.64mm,健常者平均90.55mm). 顔幅に対する外眼角間距離の割合は健常者に対して小さかった(Down症候群者平均65.11,健常者平均71.21).
    4)Down症候群者の眼裂の大きさは健常者と比較して小さかった(Down症候群者平均23.70mm,健常者平均27.60mm). 顔幅に対する眼裂の大きさの割合は健常者に対して小さかった(Down症候群者平均18.90,健常者平均21.68).
    5)Down症候群者の顔幅は健常者とほぼ同様であった(Down症候群者平均125.50mm,健常者平均127.20mm).
  • 村上 照男, 阿部 潔, 梶山 啓次郎, 松田 政登, 鈴木 陽, 茂呂 直展, 小島 哲一郎
    1995 年 33 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    未治療乳歯列反対咬合者の上下永久中切歯の歯軸角の経年的な変化と,さらに同時期に上顎前方牽引装置を適用させると,それに如何なる影響を及ぼすかを側貌頭部X線規格写真を用いて調べた. 資料は未治療群として初診時(ステージA)平均年齢4歳3か月の時,乳歯列反対咬合でその約1年6か月後(ステージB)も乳歯列反対咬合,さらにその後約1年後(ステージC)下顎永久中切歯が萌出完了後も反対を呈していた20名と牽引群との比較に際して加えたステージA-B間のみの8名,ステージB-C間のみの4名である. 牽引群はステージA-B間に上顎前方牽引装置を適用し被蓋の改善が得られた13名およびステージB-C間に適用した14名である. そして,以下の様な結果を得た.
    上顎永久中切歯の歯軸角はステージAからCを通じてはステージA-B間で減少しB-C間で増加する傾向を示した. 下顎永久中切歯はステージA-B間では特徴のある傾向は認められないがB-C問になると明確な増加傾向を示した. 上顎前方牽引装置を乳歯列反対咬合に用いるとステージA-B間においてもB-C間においても,未萌出上顎永久中切歯を有意に唇側傾斜させ,又,下顎永久中切歯については未だ萌出していないステージA-B間でも,萌出中であるB-C間においても有意に舌側傾斜させた.
  • 千枝 喜恵, 加我 正行, 小口 春久
    1995 年 33 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1歳0か月の弟と3歳7か月の姉に短期間に急性疱疹性歯肉口内炎を生じた症例を経験した. 我々はその病因診断のため,特に炎症の著しい上顎乳前歯唇側歯頸部歯肉と下口唇部から検体を採取した. そしてウイルスゲノムを検出できるポリメラーゼ連鎖反応法(Polymerase chain reaction:PCR)を行った. この結果,弟と姉ともにその炎症部位から採取した検体のDNAゲノムが,単純ヘルペスウイルスI型のゲノムと同じバンドに認められたため,本症例の原因となるウイルスは単純ヘルペスウイルスI型であることが確認された.
  • 福田 理, 田中 泰司, 柳瀬 博, 小野 俊朗, 河合 利方, 黒須 一夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本学小児歯科外来を訪れた心身障害児のうち,通常のトレーニング実施後も歯科治療に対する協力性が充分得られなかった54名を対象とし,笑気吸入のためのトレーニングに加え,笑気吸入鎮静下で歯科治療に対する適応性を高めるためのトレーニングを実施後,笑気吸入鎮静法下で歯科治療を行い,その臨床効果と発達年齢との関連について検討し,以下の結果を得た.
    発達年齢が3歳以上の患児では,本法応用によりその約72%が笑気吸入下で協力的に歯科治療を受け入れることが可能となったのに対し,3歳未満の患児では本法応用によっても約29%が笑気吸入下の歯科治療に適応できるのみで,両者間に統計的な有意差が認められた.
    以上の結果より,通常の対応法で歯科治療が困難であった心身障害児のうち,発達年齢が3歳以上に達している患児では,本法を応用することにより,歯科治療を協力的に受け入れるよう行動変容できる可能性の高いことが明らかとなった.
  • 鈴木 淳司, 鈴木 隆子, 志俵 千賀子, 香西 克之, 長坂 信夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌は化膿性疾患の起炎菌の多くを占める病原菌である. 近年,院内感染の原因菌としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が問題視されている. 我々は,本学附属病院小児歯科外来を受診した健常な小児100名の口腔よりMRSAの分離を試み,以下の結果を得た.
    1.黄色ブドウ球菌およびMRSAの検出頻度は,それぞれ41.1%および10.0%であった. これを5年前の結果と比較すると検出頻度が上昇しており,特にMRSAは約5倍もの増加を示した.
    2. MRSA分離株はすべてのβ-ラクタム剤のほか,他の多くの化学療法剤に対しても耐性を示した.
    3.すべてのMRSA分離株には薬剤感受性,コアグラーゼ型および菌体外毒素産生性などの疫学マーカーによる分析からは同一と判断される株は存在しなかった. 以上のことから,健常な小児口腔においてもMRSAが検出され,しかもその割合が近年増加する傾向があることが示された.
  • 香西 克之, 桑原 さつき, 長坂 信夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    広島市内の市街および郊外の幼稚園児および保育園児の保護者総計315名(そのうち母親は305名)を対象に,家庭環境,保護者の歯科意識,子どもの口腔状態さらに子どもの歯科治療についての実態調査を行って,生活環境や歯科に関わる保護者の意識や認識について比較検討した結果,以下のような結論を得た.
    1)家族人数は,平均4.38人で,郊外の方が市街より多く,同胞(兄弟姉妹)数に関しては,一人っ子は,幼稚園児に比べ保育園児に,また郊外に比べ市街に多かった(p<0.05).
    2)保護者自身の「定期的」な歯科受診は,わずか4.2%で,子どもの人数が増えるほど「痛くなってから」の受診が増える傾向を示した. また,デンタルフロスや歯垢染色液についての知識は高いものの,実際に使用している割合は低かった.
    3)園での歯科検診で,「齲蝕」を指摘されたのは全対象者の子どものうち34.3%であった. また,第3子以降,同胞数3人以上に齲蝕が多かった. 口腔習癖は,増齢的に減少し,特に吸指癖はその傾向が強かった(p<0.05).
    4)子どもの歯科治療について,子どもの受診経験者(69.3%)のうち,73.8%が齲蝕治療が受診目的であり,齲蝕予防目的での受診率は低かった. 診療室への保護者の入室に関しては,61.0%の保護者が付き添うことを希望したが,特に年少児,一人っ子あるいは出生順位の早い子どもに対してその傾向が強かった.
  • 河野 英司
    1995 年 33 巻 1 号 p. 54-67
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    正常ヒト下顎歯槽骨から,bone explantationによりヒト歯槽骨由来細胞(humanalveolar bone-derived cells;HAB cells)を分離・培養した. 異なるdonorから得た細胞HAB-1~4に対し,骨芽細胞分化形質マーカーの検索を行い,以下の結果を得た.
    (1)HAB-2,HAB-3およびHAB-4は通常培養条件で高いアルカリ・ホスファターゼ(ALP)活性を有していた.
    (2)100nMデキサメタゾンおよび5nM 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は,HAB cellsのALP活性を有意に上昇させた.
    (3)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する細胞内サイクリックAMPの応答は通常培養条件では見られなかったが,100nMデキサメタゾン添加培養条件ではHAB-2,HAB-3およびHAB-4においてPTHに応答した細胞内サイクリックAMPの上昇が観察され,PTHレセプターの発現が示唆された.
    (4)長期培養下では,HAB-2,HAB-4においてvon Kossa染色で濃染する石灰化基質の形成が認められた. 細胞外基質の合成と成熟にはL-アスコルビン酸の存在が必要であることが示された.
    以上の結果より,HAB-1は骨芽細胞としての形質を持たないが,HAB-2,HAB-3,およびHAB-4は骨芽細胞様の分化形質を有しており,HAB cellsはヒト歯槽骨研究のための培養系研究モデルとして有用であると思われた.
  • 研磨時期について
    西田 郁子, 葛 立宏, 木村 孝一, 塚本 計昌, 吉永 久秋, 石井 克旺, 木村 光孝
    1995 年 33 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,著者らはC2を有する乳前歯隣接面をFujiIILCを用いて修復し,即日研磨した20症例と1日経過後研磨した20症例を1年間臨床的に経過観察を行い,以下のような結果を得た.
    1.辺縁適合性に関しては,1日経過後研磨症例が即日研磨症例と比較して若干良好な経過を示していた.
    2.辺縁部の変色は,辺縁適合性の良否と同様の傾向を示していた.
    3.耐磨耗性,修復物の色調は,研磨の時期に関係なく良好な経過を示していた.
    4.歯髄反応に関しては,即日研磨症例において修復後6か月目より不快症状が増加し,歯髄処置を必要とした症例も認められた.
    5.二次齲蝕の発症は,即日研磨症例と比較し1日経過後研磨症例の方が良好な経過を示していた.
    以上の結果より,光硬化型充填用グラスアイオノマーセメントの乳前歯隣接面修復において,修復直後より1日経過後に研磨を行った方がより良好な経過が得られることが示唆された. 今後さらに長期間,乳臼歯に対しても検討を行う必要がある.
  • 歯科医師,歯科衛生士そして母親三者の顔写真を一枚のテスト画像として提示したとき
    鈴木 広幸, 小林 雅之, 下岡 正八
    1995 年 33 巻 1 号 p. 77-90
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科医師,歯科衛生士そして小児自身の母親,三者の顔写真を一枚のテスト画像として小児に提示したときの小児の眼球運動を測定,分析した. そこで母親の顔写真に視線を走査した(走査群),走査しない(非走査群)で被験者を二分し,眼球運動の分析結果を比較検討した. 加えて走査群と非走査群では,どのような性格傾向があるか調べるため,林式数量化II類による多変量解析を行い,高木・坂本幼児児童性格診断検査(T・S検査)の結果との関連性を検討し,以下の結論を得た.
    1.初回停留部位は,歯科医師が最も多く,その他,母親,歯科衛生士の順であった.
    2.停留時間が長い順に歯科医師,歯科衛生士,母親そしてその他で,被験者全員の平均は902.7msであつた.
    3.停留回数が多い順に歯科医師,歯科衛生士,母親そしてその他で,被験者全員の平均は7.2回であった.
    4.視線の走査パターンで,走査群は51.1%,非走査群は48.9%であった.
    5.走査群は有意水準5%で歯科衛生士への停留時間が有意に長かった. 非走査群は,有意水準5%で歯科医師への停留時間が有意に長く,有意水準1%で停留回数が走査群より有意に多かった.
    6.数量化II類による分析は,相関比0.453,判別的中率66.7%であった. T・S検査で走査群と非走査群との判別に強く影響を与える偏相関係数が0.200以上の項目は,神経質,個人的安定度,攻撃性であった.
  • 小田上 由紀, 貴田 章敬, 井上 三枝, 黒須 一夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯の石灰化年齢より先天性欠如歯を有する小児の成長・発育を評価するとともに, 永久歯胚欠如の発現状態の検討を行なうことにある. そこで, 愛知学院大学附属病院小児歯科外来を訪れた5~10歳の小児患者, 男児795名, 女児828名合計1623名の経年的パノラマエックス線写真5120枚, デンタルエックス線写真4850枚を研究資料とし, 検討を加えたところ以下の結果を得た.
    1. 先天性欠如歯の発現頻度は, 男児9.7%, 女児12.1%, 全体で,10.9%であった.
    2. 先天性欠如歯数別の発現頻度は,1歯欠如が最も多く, 次に2歯欠如が多く認められた. また, 男女別においても同様の傾向であった.
    3. 欠如部位では, 下顎第2小臼歯, 下顎側切歯の欠如が最も多く見られた.
    4. 先天性欠如歯を有する患児の歯の形成段階は, 男女・年齢間に有意な差は認められなかった.
    5. 健常児に比べ, 先天性欠如歯を有する小児の方が, 歯の形成段階が遅れる傾向が認められた.
    6. 欠如歯数が多くなるにつれ, 歯の形成段階は, 遅れる傾向が認められた.
  • 堀川 容子, 加納 章夫, 田村 康夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 99-110
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    満期正常分娩で出生した健康な乳児25名(平均週齢13.0±4.5週)を対象とし,吸啜運動時における舌,顎の運動と口腔周囲筋筋活動および吸引圧との協調について観察を行った. 本実験のため,口腔内の動きが観察できるCCDビデオカメラと吸引圧の変化(吸啜波)を測定する圧センサーを内蔵した哺乳瓶を作製した. 吸啜は10%糖液を吸飲させ,また口腔周囲筋として片側の側頭筋,咬筋,口輪筋,舌骨上筋群の4筋より筋活動を導出し,その時の舌および顎運動と筋電図,吸啜波を同時観察した. 以下の結論を得た.
    1)全被検児とも吸啜中舌は蠕動運動を示していた.
    2)吸引圧と舌運動および顎運動には相関が認められ,下顎は舌中央部に隆起が生じるまで挙上し,その間乳首高径は減少し,吸引圧は陽圧を示した. 顎は閉口後,後退し舌中央部の隆起は後方に移動し,この時吸引圧は陰圧を示し,そして開口するパターンを示した.
    3)側頭筋と咬筋は顎が閉口し吸引圧の陽圧相で活動を示し,口輪筋と舌骨上筋群は陽圧相と陰圧相の両者にかけて活動した. 口輪筋は陽圧相で活動が大きく,それに対し舌骨上筋群は陰圧相で活動が著明であった.
    以上より,吸啜運動時において乳児の舌および顎運動と口腔周囲筋の活動と吸引圧との間には一定のパターンで協調していることが示唆された.
  • 鵜飼 紀久代, 若松 紀子
    1995 年 33 巻 1 号 p. 111-128
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は糖尿病に羅患した母親より出生した小児(Infants of diabetic mothers,以下IDMと略す)に生じるエナメル質形成不全の成因を明らかにすることを目的として,neonatal hypocalcemiaとの関連性,及びエナメル芽細胞の各段階での機能について,ストレスプトゾトシン投与によって誘発した糖尿病母獣ラットより出生した仔(diabetic群)を用いて検討した.
    その結果,diabetic群において,生後1日目にhypocalcemiaを認めたが,2日後から血清Ca値は回復し始めた. 下顎切歯のコンタクトマイクロラジオグラフィーより,8日齢のdiabetic群において,成熟期エナメル質に減形成と石灰化不全を認めた. そして,同部のX線マイクロアナライザーによる元素分析から,形成不全部ではCak α 及びPkαのX線強度が低いことが分かった. 3H-thymidine投与によるエナメル芽細胞の移動距離の測定結果から,形成不全の認められた部位は,hypocalcemiaの影響を受けているエナメル芽細胞の位置と,関連性があることが明らかになった. さらに3H-prolineのオートラジオグラフィーから,diabetic群においてエナメル芽細胞,エナメル質への3H-prolineの移行の抑制が認められた. また45CaCl2のオートラジオグラフィーより,diabetic群においてエナメル芽細胞,エナメル質への45Caの移行が抑制されていた.
    今回の研究により,IDMにみられるエナメル質形成不全は,neonatal hypocalcemiaによるエナメル芽細胞の基質合成,分泌機能やCa輸送機能の異常によって生じることが示唆された.
  • 第1報形成窩洞のSEMによる観察
    後藤 讓治, 張 野, 一瀬 暢宏, 久保田 一見
    1995 年 33 巻 1 号 p. 129-137
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    国産の噴射切削装置KCP-2001J型を用いて,乳歯及び永久歯に窩洞を形成し,実体顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った. その結果を要約すると以下の如くであった.
    1.噴射切削装置によって形成された窩洞の形態は,回転切削による窩洞とは異なる特徴を有していた. 噴射切削による窩洞外形は滑らかな曲線状を呈し,窩縁部は丸味を帯びて窩壁部へ移行していた. 窩壁部は比較的平坦であり,窩底部は凹陥し,明瞭な点角,線角等は認められなかった. またスメアー層は認められなかった.
    2.噴射切削による窩洞はその特徴から,コンポジットレジンによる接着修復の窩洞に適していると考えられた.
    3.噴射ノズルの先端を歯面に接触させずに形成が行われるので,ハンドピースの操作にやや熟練を要する.
    4.窩洞周囲の健康歯質にも噴射による形成の影響が認められたので,その対策が望まれる.
    5.噴射切削中の粒子の飛散の対策を十分考慮する必要がある.
    6.切削時の騒音は低く,振動,加圧,臭気等も認められず,切削も短時間で行えるので,本法は小児歯科領域における有効な応用の可能性が示唆された.
  • 小野 俊朗, 今村 基尊, 木澤 摩美, 今村 節子, 内藤 宗孝, 黒須 一夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 138-148
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    パノラマX線写真撮影装置には,左右の顎関節をそれぞれ2画像ずつの4分割撮影ができるモードが開発され,比較的容易に顎関節部の画像を得ることが可能となった. しかし,下顎頭や関節窩のどの面が写し出されているのかは不明であり,報告もみられない. そこで我々は,同装置による小児の顎関節部X線撮影法の有用性について,下顎頭画像を用いて検討をした.
    資料は,Hellmanの咬合発育段階IIA,IIIA,IVAのヒト乾燥頭蓋骨を用い,下顎頭の撮影を行った. また,頭部の位置付けを変化させることにより下顎頭部でのX線入射角度を変えた時の画像の検討も行った. それにより,以下の結果を得た.
    1)IIA,IIIA期においてSchuller氏変法の画像と比較すると,本法の方が下顎頭の形態を描出させる能力は高かった.
    2)各咬合発育段階での下顎頭の頭頂部付近の輪郭は,最突出部が描出されていた.
    3)頭部を上方へ移動させることにより,下顎頭の輪郭は読影しやすくなった.
    4)画像の再現性を得るために,イヤーロッドは必要であると考えられた. 以上,パノラマX線写真撮影装置の顎関節モードによる小児の顎関節部の撮影は,スクリーニング検査としては,有効な手段であり,臨床で種々応用できることが示唆された.
  • 牧 憲司, 葛立 宏, 古谷 充朗, 大里 泰照, 木村 孝一, 塚本 計昌, 木村 光孝
    1995 年 33 巻 1 号 p. 149-153
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,学童期小児,思春期小児における下顎角部皮質骨の厚さを比較検討する目的で,九州歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した7歳児から12歳児までの学童期小児40名と13歳から18歳迄の思春期小児40名の計80名を対象にパノラマX線写真による下顎角部皮質骨の計測を行い,次のような結果を得た. v1.学童期小児の平均値は,0.90±0.23mm,思春期小児の平均値は1.09±0.34mmであった. 男女別にみた下顎角部皮質骨の厚さの平均値は,学童期で男子0.88±0.20mm,女子0.93±0.25mm,思春期で男子1.07±0.41mm,女子1.12±0.26mmであった. 左右別にみた下顎角部皮質骨の厚さの平均値は,学童期で左側0.87±0.21mm,右側0.93±0.22mm,思春期で左側1.14±0.35mm,右側1.05±0.27mmであった.
    2.男女間,左右間のt検定を行ったところ有意差は認められなかった. 年齢間では,思春期小児が学童期小児に対して有意に高値を示した.
    3.年齢と下顎角部皮質骨の厚さの相関係数r=0.809であった.
  • 野中 和明, 佐々木 康成, 柳田 憲一, 八田 奈緒美, 中田 稔
    1995 年 33 巻 1 号 p. 154-162
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Bloch-Sulzberger Syndromeは,全身および口腔内にさまざまの異常をきたす先天性異常のひとつであり,特有の皮膚症状の変化を呈することから,色素失調症(incontinentiapigmenti)とも呼ばれている. 家族内発症の症例が多く,また男児より女児に圧倒的に多く発症することなどから,X連鎖性優性遺伝形式であると言われている. 稀な症候群であるが,歯の萌出遅延や先天性欠如などが報告されていることから,歯科学的にも注目すべき遺伝性疾患の一つである. 今回我々が3歳時から12歳時まで経年的に経過観察した女児では,以下のような興味深い所見が認められた.
    1)顔面,上腕および舌尖部における褐色の色素斑
    2)頭頂部の円形様脱毛症
    3)弱視傾向.
  • 新谷 誠康, 金本 優香, 大嶋 隆, 祖父江 鎭雄
    1995 年 33 巻 1 号 p. 163-168
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    外傷後の幼若永久歯に発症した歯根嚢胞に対して,意図的再植術を応用した.
    患歯の下顎右側中切歯をできる限り歯根膜を傷つけないように注意深く抜歯し,嚢胞上皮を掻爬・摘出した. 同時に,抜去歯根管内を生理食塩水で洗浄後に水酸化カルシウム配合製剤による根管充填を行った. 根管充填後,歯を抜歯窩に挿入し,角型アーチワイヤーと光重合型コンポジットレジンを用いて暫間固定した. 固定装置は2週間後に除去し,その経過を観察した.
    術後9か月を経過したが,臨床的にもX線的にも異常な所見は認められない. 現在,再植歯根尖部には硬組織による閉鎖(アピカルブリッジ:apical bridge)を認め,根尖部のX線透過像も消失して良好な経過をたどっている.
    以上の結果は,根尖病巣を伴った幼若永久歯の治療法としての意図的再植術の有効性を示唆している.
  • Bioassay法による血中濃度・唾液中濃度と小児における臨床応用
    佐藤 輝子, 野坂 久美子, 甘利 英一, 佐々木 次郎
    1995 年 33 巻 1 号 p. 169-178
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    抗生物質の有効性を検討する上で,指標となる血中濃度を,唾液中濃度から推測することが可能であるかどうかを確かめる目的で,新規マクロライド系抗生物質クラリスロマイシンを用い,基礎実験ならびに臨床的検討を行った. 基礎実験は,健康成人11名を対象に,Bioassay法により,血中濃度と唾液中濃度の測定を行い,両者の関連性を検討した. また,臨床的検討は,本学小児歯科外来を受診した患者40名の歯科口腔領域を対象とした. その結果,次のような結論を得た.
    1)基礎実験において,クラリスロマイシンを経口投与した結果,Cmaxは血中濃度1.34μg/mlに対して,唾液中濃度1.44μg/mlであり,血中濃度と唾液中濃度は,ほぼ類似した体内動態を示し,唾液中への良好な移行性を示した.
    2)感染予防症例の10名に対して,実際の作用部位である抜歯創貯留血中濃度と,唾液中濃度を測定した結果,両者の値は同程度であった. さらに服用後40分までの症例から2時間30分までのどの症例においても,血中濃度ならびに唾液中濃度は,すべてMIC値0.39μg/ml以上の値を示した.
    3)小児における臨床的検討の結果,評点判定,主治医判定ともに,歯性感染症例では,顎炎,歯周組織炎とも,100.0%,歯冠周囲炎は75.5%であり,感染予防症例では,全体で,96.2%と高い有効率が得られた. なお,副作用の発現は1症例のみであった.
    以上の結果から,クラリスロマイシンの唾液中濃度を測定することによって,血中濃度を推測することが可能であり,しかも本薬剤は,小児の歯科口腔領域における感染症ならびに感染予防に有効かつ安全な薬剤であると考えられた.
  • 谷地田 知子, 米持 浩子, 野田 忠, 鈴木 誠
    1995 年 33 巻 1 号 p. 179-186
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯が外傷を受けた場合,乳歯の歯根と永久歯胚は近接しているため,その衝撃は後継永久歯に容易に伝達されると考えられる. 私たちは本学小児歯科外来において,先行乳歯の外傷が原因で,後継永久歯の歯根形成が障害されたと考えられた症例を経験したので,その経過を病理組織学的所見とともに報告する.
    患児は5歳9か月時に約2mの高さから転落し,上顎の左側乳中切歯は完全脱臼,右側乳中切歯は切縁を約1mmほど残して陥入した. 右側乳中切歯は経過観察としたが,7か月後に自然脱落した. 7歳0か月の定期診査時,上顎の左側永久中切歯はほぼ完全に萌出していたが,右側永久中切歯は未萌出であった. エックス線写真では,右側永久中切歯の歯根は歯頸部中央から遠心にかけて斜めにわずかに形成されていたが,左側永久中切歯の歯根より明らかに短かった. その後右側永久中切歯は開窓され,ほぼ完全に萌出した. 歯冠の形態・色調に異常は認められず,エックス線写真では右側永久中切歯の歯頸部遠心側に歯髄腔を伴った細い歯根の伸び出しがみられた. 8歳9か月時,友人と衝突して右側永久中切歯が歯頸部で破折したため,同歯を抜去した.
    抜去した右側永久中切歯はほぼ歯冠部のみで,その病理組織学的所見は次のとおりである. 歯冠部象牙前質の内側に,異型象牙質や有細胞セメント質などが形成され,歯髄腔が狭窄していた. また,歯頸部口蓋側付近の異型象牙質の中に,正常な歯根象牙質と思われる組織がみられ,外傷による機械的な力により形成途中の歯根が歯冠方向に折れ込んだと考えられる所見がみられた.
  • 菊池 優子, 四井 資隆, 清水谷 公成, 古跡 養之眞, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    1995 年 33 巻 1 号 p. 187-191
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の頭部外傷は救急病院を受診したのちに歯科系病院を経由するのが一般的である. しかしながら,救急病院においては顎口腔領域の異常を訴えても,後頭前頭位撮影や側方向撮影などの単純撮影のみの診査に留まることが多い. 特に小児の場合には未萌出歯,永久歯胚が顎骨内に混在しているため顎骨骨折の有無についての判断は極めて困難である.
    そこで,今回われわれは1989年から1993年までに,大阪歯科大学附属病院歯科放射線科を受診した12歳以下の顎骨骨折48例のうち下顎骨骨折26例を対象として,臨床所見を集計し,その特徴を探ると共に診断を行う場合の注意点について検討したところ以下の結果を得た.
    1.小児の下顎骨骨折26例の年齢性別分布には特徴はみられなかった.
    2. 歯の外傷を伴う下顎骨骨折は26例中3例であった.
    3.部位では下顎骨頸部骨折(骨折線44本中24本,54.5%)が多く認められた.
    4.他施設にて骨折なしと診断された4例に下顎骨骨折を認めた.
  • 千枝 喜恵, 小島 寛, 三留 雅人, 千枝 一実, 小口 春久
    1995 年 33 巻 1 号 p. 192-199
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
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    本学歯学部附属病院小児歯科外来において経験した歯冠軸傾斜度60度以上の埋伏上顎中切歯を有する患児16名(男児5名,女児11名)について埋伏歯発見の経緯,埋伏の原因,埋伏部位の左右差,初診時年齢分布について調査した. また開窓・牽引を行うか,抜歯処置を行うかの判定基準として歯冠軸傾斜度,歯根彎曲度,歯根形成度について比較検討した.
    その結果,開窓・牽引症例は初診時年齢平均7歳5か月,歯冠軸傾斜度は平均88.8度,歯根彎曲度は64.0度,歯根形成度はRi~R1/4が2歯,R1/4~R1/2が3歯,R1/2~R3/4が2歯,R3/4~Rcが1歯であった. 一方,抜歯症例は初診時年齢平均9歳6か月,歯冠軸傾斜度が平均111.6度,歯根彎曲度が平均91.6度,歯根形成度はR3/4~Rcが4歯,ついでRcが3歯であった.
    開窓・牽引処置を行う際の判定基準として歯冠軸傾斜度の他に歯根彎曲度,歯根形成度,初診時年齢なども考慮することが重要であると考えられた.
  • 1995 年 33 巻 1 号 p. 201-255
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2013/01/18
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