小児歯科学雑誌
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日本人小児の頭部X線規格写真基準値に関する研究
日本小児歯科学会
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1995 年 33 巻 4 号 p. 659-696

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抄録

最近の日本人小児の頭部X線規写真基準値を検討するために,全国の歯科大学小児歯科学講座の協力を得て収集された側貌頭部X線規格写真329枚,正貌頭部X線規格写真274枚を資料として調査研究を行った. 側貌頭部X線規格写真については,昭和30年前半に報告された飯塚,坂本,小野の各論文と計測方法等を一致させ,比較検討を行った.
昭和30年以降平成年間にかけて,日本人小児に身長の著しい増加をもたらした環境的諸因子は,顎・顔面頭蓋各部にも長さの増加と発育加速現象という影響を及ぼした. 長さの増加については男児に,発育加速現象では女児により明瞭に観察された.
顎・顔面頭蓋を深さと高さに分けると,長さの増加は高さにより著しかった. 深さの増加は前脳頭蓋底で全期間,平均身長との相対成長から推定される顔面頭蓋各部の伸びを加えた補正値以上に,鼻上顎複合体では混合歯列中期以降になって補正値以上に観察された. ただし,下顎骨の増加量は多くの期間で補正値以下であった. 一方,高さの増加は前顔面高よりも後顔面高にさらに顕著であった. また,発育加速現象としての上下中切歯歯軸や下顎骨外形の成人様形態変化は混合歯列中期から認められた.
正貌頭部X線規格写真からの分析結果を加えて,脳頭蓋部,上顔面部,下顔面部それぞれを代表する項目で,近傍する幅と深さの成長様式を比較したところ,ほぼ同様な傾向を示したが,幅は深さに先行して成長していた. また,幅の増加は特に下顔面部で顕著に認められた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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