小児歯科学雑誌
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カルシウムの歯質脱灰抑制能に関する研究
田中 光郎松永 幸裕小野 博志門磨 義則
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1995 年 33 巻 4 号 p. 728-732

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抄録

溶液のエナメル質に対する飽和度に影響する因子は,カルシウム,リン酸基,水酸基すなわちpHであるが,本研究では特にカルシウムの濃度に注目し,その変化がエナメル質の脱灰に及ぼす影響について検討した.
ヒト小臼歯の9本からそれぞれ3枚ずつの切片を切り出し,140から160μmに研磨したものをネイルエナメルでコーティングし,エナメル質表面のみに長さ約5mmの窓を形成した. これを,乳酸0.1M,リン酸二水素カリウム23mM,アジ化ナトリウム3mM,pH4.4で,塩化カルシウムのみを7,14,21mMと変化させた3種類の溶液に25℃で浸漬した. 一週間後,コンタクトマイクロラジオグラムを撮影し,コンピューターによる画像解析によって,表層下脱灰を定量的に測定した. その結果,カルシウム濃度が7mMでは大きな表層下脱灰が見られたものが,カルシウム濃度の増加によって脱灰が減少し,21mMではほとんど脱灰が認められなかった.
この結果から,脱灰液中のカルシウム濃度のみの増加によって,pHを含むその他の条件はまったく同一であっても,エナメル質の脱灰を抑制しうる事が明らかになった. これはカルシウムの齲蝕抑制能の理論的な裏付けの一つとなるものである.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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