1995 年 33 巻 4 号 p. 805-814
近年,小児の外傷は増加傾向にあり,乳前歯では脱臼だけでなく,脱落も少なからず見うけられる. 従来より,上顎乳前歯の1歯または2歯の早期喪失症例では,床型の可撤保隙装置か可動型のPin&Tube型保隙装置が適応とされてきた. しかし,可撤保隙装置は患児によっては装着が困難であったり破損を繰り返すことも多い. また,高年齢であっても可撤保隙装置の異和感で,装着しない場合も少なくない. 一方,これまでのPin&Tubeでは支台歯となる乳歯を既製金属冠やジャケット冠とするため,健全歯であっても切削が必要であった.
そこで今回,支台歯の切削を必要しない,メッシュを用いた接着性レジンによるPin&Tube型保隙装置を試作し,装置の改善も含めて臨床応用を試みた.
今回対象としたのは上顎乳中切歯1歯の喪失例で,10症例に適応した. これらの症例のうち,歯列の成長に伴う側方拡大や,Pin&Tube部分の可動も確認された. そのうち比較的年齢の高い2症例は,後続永久歯との順調な交換もみられた.
こうした結果から,本装置は機能的にも審美的にも優れ,臨床応用が十分可能であることが示唆された.