抄録
日本における出生率の減少に伴って歯科的関心は高まってきており小児一人当たりの齲蝕歯数は年々減少している.数年前と比較してひどいランパントカリエスの子供はあまり見られない.しかしながら外傷の患児は減少することはないように思われる.
4歳3か月の男児が上顎前歯部を打撲し九州歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した.患児は電柱にぶつかりAは出嵌入し血が見られ,翌日外来を受診した.歯式は_〓でありHellmannのDental Age はII A期である.歯科用エックス線写真ではAの歯槽硬線は明瞭で歯根膜腔は広く周囲の骨梁は明瞭であった.また後継永久歯に異常はなくDental Sack に包まれている.他の歯牙や歯槽骨にも異常はなかった.Aの歯冠部の約1/2の嵌入及び同部歯肉よりの出血が見られた.そこで 〓 かけにて整復固定を施した.Aは電気歯髄診では(-)を示した.その後1週間に1回の割合で電気歯髄診及びエックス線写真撮影により経過観察を行った.約1か月後固定を除去した.この時点でのエックス線所見ではAの歯根膜腔の拡大がみられる他は異常所見は認められず臨床症状も良好であった.またEPTは(+)に転じ1年経過後の現在まで予後は良好である.結果は以下のとおりである.
1.臨床所見によりAは歯冠の約1/2の嵌入および圧痛や自発痛や出血が認められた.
2.処置としては 〓 にレジンとワイヤーによる整復固定を施した.
3.1年経過の現在予後は良好である.